WBC世界バンタム級王者山中慎介(33=帝拳)が、「中盤勝負」で11度目の防衛を果たす。鉄壁の防御を誇る元WBA同級スーパー王者アンセルモ・モレノとの昨年9月以来の再戦(16日、エディオンアリーナ大阪)に向け7日、都内のジムで練習を公開。2-1の大接戦となったV9戦の反省を踏まえ、WBCの独自ルールである4回終了時の公開採点後に、ポイントによってスタイルを変える準備をしてきた。実戦練習も打ち上げ、万全の仕上がりを強調した。

 山中が過去最多140回のスパーリングを打ち上げた。鋭いフットワークから左を次々と打ち込むなど、キレのある動きで相手を圧倒。「先週から一気に調子が上がった。感覚もすごく良いし、スイッチが入った」。好調のバロメーターである左足裏の皮もめくれ、表情に充実感があふれた。

 僅差の判定で競り勝った難敵モレノとの再戦。勝利のポイントは4回と5回の間にある、1分間のインターバルだ。その時点でのポイントが発表される「公開採点」を生かし、流れによって5回以降の戦い方を変える準備をしてきた。陣営の浜田剛史代表は言う。

 浜田氏 簡単にKOできる相手ではないし、手の内が分かっている分、前回以上にセコンドを含めた知恵比べになる。そういう意味で、ジャッジの傾向を早く知ることが重要。最初の4回がどう評価されたかを分析し、その後の作戦を瞬時に決める必要がある。

 V9戦は、序盤4回を山中がリードするも、中盤はモレノのペース。8回終了時点ではリードを許し、残り4回でどうにか逆転して薄氷の防衛を果たした。だが、「今回は中盤勝負」と山中は断言した。通常と異なるファイター型や、ガードを固めたディフェンスなど、さまざまな展開を想定した練習を重ねてきた。「スタミナでは負けない自信があるし、8回をリードで終えたい。終盤になって向こうが焦って出てきてくれればさらに戦いやすい」とイメージを膨らませた。

 会見の最後には、先週、長男豪佑君(3)が遊んでいる最中に転倒し、顔が傷だらけになってしまったエピソードを披露。「負けたボクサーのようだったし、こうはなりたくないと思った」と笑わせるなど、大一番を前にも特別な気負いはない。山中が、豊富な引き出しで最強挑戦者を迎え撃つ。【奥山将志】

 ◆15年9月のモレノ戦 序盤はジャブでけん制し合った。腰を引き、顔を後方に下げる独特な構えのモレノに対し、山中が距離を探る展開となった。4回終了時は積極性で勝る山中が2-0で支持を受ける。そこからモレノがペースアップ。強打はないものの、打ち終わりや、ショートのパンチを山中が浴び、8回終了時は逆に1-0でリードを許す。9回、山中は攻めに出るものの、カウンターの右フックを浴びてぐらつく。それでも10回、ようやく得意の左をヒットさせてモレノを追い込むと、終盤には一気の連打で逆転勝ちした。