<激突!!金の魂(2)>

 「激突!!金の魂」の2回目は、吉田の恩師、全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長(58)。吉田との出会い、バルセロナ五輪でのエピソード、勝敗予想などを語った。

 吉村氏は東京・世田谷区にある柔道の私塾「講道学舎」の師範として4年間、バルセロナ五輪ではコーチとして吉田を指導した。吉田は中2の12月、同学舎に入門するため愛知から上京した。吉村氏は14歳の吉田との最初の練習で闘争心を見抜いた。「どの程度の実力か、試しに奥襟締めをしたら泣くんだ。普通の子どもなら、そこで意気消沈するんだが、秀彦は何度もかかってくる。闘争本能はあった」と振り返る。

 吉村氏が驚いたのは、吉田の痛みに対する強さだった。吉田は92年7月開幕のバルセロナ五輪直前の5月、実業団の大会で左腓骨(ひこつ)を痛め、ねんざと診断された。金メダルを獲得して帰国後、あらためて診察すると、骨折していたことが判明。「骨折したまま痛みをこらえて、6試合全部1本勝ちで金メダル取った。あいつは痛みには強いんだ」。吉田が中学時代、中国遠征があった。遠征直前、息抜きにサッカーをさせたら、足首を骨折した。それでも「遠征に行きたい」と直訴。骨折したまま1週間に10試合近くをこなして帰国したという。

 北京五輪の強化委員長として石井も知る吉村氏が、もし柔道で全盛期の両者が戦った場合を予想した。「秀彦が勝つ。秀彦は組み手がうまい。慧の釣り手に対応できる。釣り手を落とすのがうまいから、慧はカウンターの大外刈りに入れないんじゃないかな」。一方で総合格闘技での対戦については「40のおやじと、20代前半だろ。無謀だろ。秀彦の打撃?

 あんな猫パンチじゃ効かねえだろ」と石井の勝ちを予想した。【塩谷正人】