<新日本:東京大会>◇4日◇東京ドーム◇4万1500人

 中邑真輔(29)が打撃戦を制し、新日本の至宝を守った。メーンのIWGPヘビー級タイトルマッチで高山善広(43=高山堂)を必殺ボマイェ(ひざ蹴り)4連発からの片エビ固めで破り、4度目の防衛を果たした。ちょうど6年前、右眼窩(がんか)底骨折など大ダメージを負わされた相手に、同じ大舞台で完勝した。

 高く頑丈な壁を、中邑が豪快に蹴り壊した。105キロの全体重をかけるように、高山の顔面に右ひざをめり込ませる。2発目はガードされたものの、すぐさまガードをかわして左ひざを見舞った。最後に右をもう1発。余力のなくなった高山から、ピンフォールを奪った。「過去は今。今は未来。今を生きるしか、未来は作れねぇ。今日を生きたぜ!

 以上!」。マイクを持つと、いつもの哲学的な言い回しで、巨大なドームの空間に思いを響かせた。

 昨年、開発したひざ蹴りボマイェにこだわった。04年1月4日、東京ドームの舞台で、同じようにIWGP王座をかけて高山と戦った。ベルトは守ったものの、高山のひざ蹴りの衝撃はすさまじく、右眼窩底骨折で王座返上を余儀なくされた。「あれでひざ蹴りの威力を思い知った。全体重がひざの一点にかかるわけだから、交通事故に匹敵する威力がある」。武器の完成度、自分の成長を実感するのに、高山以上の相手はいなかった。

 恐怖を力に変えた男に、挑んでみたかった。昨年12月、永田との防衛に成功後、次の相手に「おれの望みにかなう唯一の選手」と高山を指名した。06年に脳梗塞(こうそく)から復活した男に、尋常ではないすごみを感じていた。「高山選手のように、地獄に片足を突っ込んだ経験は自分にはない。こんな恐怖を味わうのは久しぶり。それを楽しみたい」。逆に、高山のひざも合計18発食らった。「(高山のひざは)1発1発、壊れそうだった」。精神的にも越えなければいけない壁を越え、中邑がまた1歩、成長した。

 中邑が新春ドーム興行のメーンを飾るのは、これが5回目。武藤敬司と並び、史上最多となった。「ドームといえば、日本のプロレスの顔。だけど、そんなことにとらわれていたら、自分が小さくなってしまうでしょう?」。去年は11年も前に引退したアントニオ猪木との対戦を希望し、物議を醸したことがあった。小さくまとまるつもりはない。答えも、ゴールもない。規格外の男が、これからも道なき道を突き進んでいく。【森本隆】