横綱鶴竜(30=井筒)が一気の寄りで、東前頭3枚目の佐田の海(28)を退けて1敗を守った。今日8日目には1年前の秋場所で、変化で初金星を配給した逸ノ城(22)と対戦する。鶴竜と大関稀勢の里(29)平幕の勢(28)蒼国来(31)が1敗で続くが、関脇栃煌山(28)は2敗に後退した。

 流れるような相撲は、わずか2秒8。鶴竜の、今場所最速だった。立ち合いで左から張って、小うるさい佐田の海を止めた。すぐにもろ差しとなると、休まなかった。鋭い出足で一気に寄り切り。「いいですね。(これを)続けていくことが大事」と自画自賛した。

 白鵬、日馬富士の休場で初めて1人横綱の重責を担う今場所。目に見えない疲れは自然とかかる。それを癒やしてくれるのが、初めて場所中をともに過ごす、生後3カ月半の長女アニルランちゃんだった。

 朝稽古後は1度、自宅に帰り、再び部屋に行って場所へ行く。夜も、場所中は部屋を分ける力士もいる中で、一緒に就寝する。「言うほど夜泣きもない。子どもでストレスを感じるなんて最悪じゃないですか。親にならない方が良い」とまで言う。愛娘との時間が増えて、好きなテレビを見る時間は自然と減った。

 71代横綱となって9場所目。悲願の横綱初優勝は、まだ遠い。さかのぼれば12場所を要した47代柏戸以来となる。だが、賜杯への強い気持ちに、新たな思いも加わる。子どもが物心つくまで相撲を-。「そういう気持ちがある」と誓った。

 今日8日目は逸ノ城戦。1年前の秋場所13日目に新入幕として挑まれ、変化をされてバッタリと両手をついた。普段は温厚な横綱が珍しく、口元を震わせて報道陣の質問をさえぎった。怒りは翌九州で勝つまで続いた。その感情を今、振り返り「あってよかった。まだまだ負けられないという気持ちに持って行けた」。逸ノ城戦は悲願への、原点回帰となる。【今村健人】