新十両の宇良(23=木瀬)は、異色の相撲を取る。173センチ、127キロの体で低く構え、時には一気に押し、時には足を取って揺さぶる。超個性派の新星は、いかに成長してきたのか。連載「低空の魔術師 新十両宇良」で、秘密に迫る。

 中3までレスリングを続け、相手を担いで後ろに倒す居反りの「原型」はできた。だが、京都・鳥羽高で相撲だけに絞った宇良が、高校でその大技を仕掛けることはなかった。「足を取ったり、引いたりしていたので『負けてもいいから押せ』と言い続けた」と、鳥羽高の前監督だった田中英一氏(43)は話す。

 試合すら頻繁に出場できず、同級生のタオル持ちに甘んじることも。目立つ成績は高3時の近畿大会80キロ級準優勝くらい。卒業後は就職希望だったが、田中氏の勧めもあり関学大に入学。その2年生の夏に、ターニングポイントが訪れた。

 大阪・堺市で行われた西日本学生体重別65キロ級。前年同級で全国制覇した宇良は、1回戦で無名の京大1年生に敗れた。全国大会に出られない屈辱を味わい「残りの大学生活、本気で相撲に打ち込む」と一念発起。無差別級に出るため本格的トレーニングを始めた。

 翌13年5月に成果は出た。全国選抜大学実業団対抗和歌山大会で、体重が倍近くある強豪を足取りなどで次々に撃破。準決勝では、正代(現幕内)を下していた中村(現幕下大輝)を破る。決勝では、川端(現幕内大翔丸)を破った大道(現幕内御嶽海)と対決。惜しくも敗れたが堂々の2位で注目され、人生が変わり始めた。【木村有三】