AKB48増田有華(20)が、実力で「センター」の座を射止めた。演出家宮本亜門氏(54)が手掛けるミュージカル「ウィズ~オズの魔法使い~」(9月28日初日、KAAT神奈川芸術劇場ホールほか)の公開最終オーディションが2日、都内で行われ、増田が主演のドロシー役に選ばれた。歌唱審査では、涙を流しながら熱唱し、宮本氏を泣かせた。6月の選抜総選挙では26位。選抜入りを逃したが、AKB48グループ186人が参加したオーディションで頂点をつかんだ。

 増田は歌の途中から、泣いていた。数日前からのどの調子が悪く、いつものクリアな高音が出ない。苦しみに顔をゆがめ、涙を流しながら、劇のクライマックスで歌うソロ曲「Home」を歌い上げた。客席では宮本氏が、目を潤ませていた。聞き終えると、頭上で何度も拍手した。

 主役のドロシーは、不安にさいなまれながら、信じた道を突き進む15、16歳の少女。映画版では、ダイアナ・ロスも演じた役柄だ。その印象に近づけるため、増田はトレードマークの黒髪を茶色に染めた。「自分がこんなに根本的に変わろうと思ったのは初めてです。人生を変えるオーディションになりました」。レンタルビデオ店を10件以上も回り、73年も前に公開された原作(映画版)を探すほど、役作りに没頭した。

 宮本氏は、過去にAKB48グループのメンバーが自身の作品のオーディションを受けにきた際、実力の高さに驚き、今回の主役をグループから選ぼうと決めた。オーディションには、メンバー総勢約240人のうち77・5%にあたる186人が挑戦。情報を一切入れず、横山由依や松井玲奈ら選抜常連組も容赦なく1次で落とした。そして、2次、最終と経て選んだのが増田だった。「チキショー!

 何だろう。愛に満ちていて、壮大で、世界がグアーッと伝わってきた。うまいとか下手の次元を超えていた」。選考後も興奮が収まらない様子だった。

 増田はNHK「のど自慢」で優勝経験があり、ファンの間でも「AKB48の歌姫」と呼ばれている。中学時代はバスケットボールの大阪市選抜も経験し、踊りも得意。総選挙では選抜外の26位だったが、実力で大役をつかんだ。6年前に大阪から単身、上京。1人暮らしでたくましくなった20歳は「14歳のころはドロシーのような無邪気さがありました。そのころを思い出したい」と笑みを浮かべた。【森本隆】

 ◆増田有華(ますだ・ゆか)

 1991年(平3)8月3日、大阪府生まれ。2歳のころ小児がんにかかったが克服。06年にAKB48の2期生オーディションに合格し、チームKでデビューした。10年にチームBへ異動。昨年の選抜総選挙は20位で選抜入りした。ダンス&ボーカルユニットDiVAとしても活動する。昨年はミュージカル「中野ブロンディーズ」にも出演した。愛称「ゆったん」。