まだ9月中旬ですが、ハリウッドでは早くも来年のアカデミー賞に向けた賞レースの幕が切って落されました。近年はここで賞を受賞してオスカーに輝く作品が多いことから、アカデミー賞の前哨戦として注目を集めているトロント国際映画祭が開催され、ベネディクト・カンバーバッチ主演の「ジ・イミテーション・ゲーム」が、最高賞にあたる観客賞に輝きました。昨年の「それでも夜は明ける」、2010年の「英国王のスピーチ」、08年の「スラムドッグ$ミリオネア」など、近年は観客賞を受賞してオスカーを受賞した作品が多いだけに、「ジ・イミテーション・ゲーム」は早くもオスカーの最有力候補になっています。本作は第二次世界大戦でナチス軍のエニグマコードを解読したアラン・チューリング氏を描いた伝記作品。天才的数学者を演じたカンバーバッチは主演男優賞候補に、そして共演のキーラ・ナイトレイは助演女優賞候補にそれぞれ名を連ねています。

 まだまだ賞レースは始まったばかりですが、同作以外の現時点でのオスカー候補作品も紹介しましょう。リチャード・リンクレイター監督がメガホンをとり、パトリシア・アークエット、イーサン・ホークらが出演する「6才のボクが、大人になるまで。」は、6歳の主人公メイソンとその家族の12年間を同じキャストでなんと12年間に渡って撮り続けた画期的な作品。あどけない6歳の少年が18歳の大人になるまで成長と変貌を描いた本作はサンダンス映画祭で大絶賛され、ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に選出されて監督賞に輝いた注目作です。

 84年ロサンゼルス五輪のレスリング種目で金メダルに輝いたマーク・シュルツとその兄で同じく金メダリストのデイブ・シュルツ兄弟を襲った悲劇的な実話を映画化した「フォックスキャッチャー」も、有力候補の一つ。スポンサーだった心に問題を抱えた米富豪ジョン・E・デュボンが、デイブを射殺した事件の真相に迫る内容。カンヌ国際映画祭で高い評価を受け、ベネット・ミラー監督は監督賞を受賞しています。

 鬼才デヴィッド・フィンチャー監督がギリアン・フリン氏による小説を映画化した「ゴーン・ガール」は、現代の夫婦の抱える秘密を暴くサイコスリラー。米国では600万部以上売り上げたベストセラーで、主演は「アルゴ」でアカデミー賞作品賞を受賞したベン・アフレック。今月26日から開催されるニューヨーク映画祭のオープニングを飾ることも決まっており、こちらも注目の的です。

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