災いや幸運は前触れもなく舞い込んでくる。分かってはいても、人は動揺し、日頃押し隠している本音が頭をもたげる。

 この映画は、祖父の誕生会を通して、一家の喜怒哀楽を巧みに映し出す。

 祖父の次男一家が、ロンドンからスコットランドの実家に向かうところから物語は始まる。会話の間合いや角度を付けたカメラワークが巧みで、夫妻のやりとりや3人の子どもたちの表情から崩壊寸前の家族関係が浮き彫りになる。

 迎える長男夫婦も成り金趣味の夫、情緒不安定な妻、引きこもりがちな1人息子と救いがない。

 息詰まる状況から、祖父は3人の孫を海岸に連れ出す。これがとんでもない事件を引き起こしてしまう。

 が、この事件が皮肉にも好転のきっかけとなる。家族それぞれが口にする本音が、互いの心に刺さり始める。家族のわだかまりを「一過性」と達観していた祖父の思いが通じたように。

 次男一家が、海辺ではしゃぐシーンのゆったりとしたカメラワークは冒頭と対照的だ。英BBCでドラマ演出を積んだガイ・ジェンキン監督はさすがに練れている。次男の妻ロザムンド・パイクがさらっとうまい。【相原斎】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)