08年のリーマン・ショックは記憶に新しい。事実に基づく裏側は、意外な逸話の連続だ。不動産バブルに疑問の目を向け、4人の男が逆張りで大もうけする。

 誰も疑わない好景気のほころびを見つけるのは「変な人」ばかりだ。クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴスリング、ブラッド・ピット-二枚目が似合う俳優たちが奇人ぶりを競い合う。

 オフィスでロックのごう音を響かせ、世捨て人のような生活を送る。敵は巨大金融機関と世間の先入観。ベールは奇声を上げ、カレルは青筋を立てる。

 彼らが折れないのは「本当の数字」を曇りのない目で見て、「実体経済の足元の危うさ」を自ら足を運んで実感しているからだ。人気お笑い番組「サタデー・ナイト・ライブ」の脚本を長らく担当したアダム・マッケイ監督は、序盤の紙芝居風演出で、米経済史をさらっと見せる。

 金融商品が実体経済とかけ離れ、マイナス要因から目を背けた「常識」が醸成される。経済音痴にも道筋を付ける池上彰ばりの解説力だ。専門用語が飛び交う世界で観客に肩の力を抜かせ、ドラマに引き込むところにこの監督の腕がある。【相原斎】

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