新人最終年に入った星組7年目の紫藤(しどう)りゅうが、傑作オペレッタをもとにした「ミュージカル『こうもり』」で、新人公演に初主演する。本役のトップ北翔海莉(ほくしょう・かいり)に“弟子入り”し、初のセンターに立つ。東京宝塚劇場は5月26日に上演する。

 すでに兵庫・宝塚大劇場では今月5日に初の大役を演じきった。上演直前、本公演で主演する北翔海莉が、紫藤の緊張ぶりを察したかのように「リラックスして」と声を掛けた。われに返った紫藤は、体の力を抜く体操をして本番を迎えた。「まずは楽しもう」と言い聞かせ、歌声を響かせた。終演後には涙もこぼれた。「楽しめたので70点」。少し辛口な自己採点は、まだまだやれるという手応えでもあった。

 「無我夢中で走ってきて、最後の1年。あっという間。この1年は大事に」

 174センチの舞台映えする長身。笑うと温かく優しい空気が流れる。ギャップと好奇心、素直さが武器だ。

 「歌とお芝居にちょっと苦手意識があるので、北翔さんはすべてがすばらしく、特に歌の部分はたくさん質問して学びたい」

 今作はオペレッタ。歌、演技、ダンスと3拍子そろった北翔に、体当たりで質問をぶつける。仕事で話す機会を得て「どうしたら歌が上手になるんですか?」。単刀直入に迫った。

 「ものまねをしなさい。耳から情報を入れて、声に出してみなさいと、おっしゃってくれました」

 ウィーンで上演された原曲盤を自宅で聴き、感情に合わせて歌ってみた。

 「クラシックの発声は今までと違う。もっと深く、響きのある声を出さないと、作品にも深みが出ない」

 本公演では北翔と、2番手スターの芸達者な紅ゆずるが抜群の間合いで喜歌劇を進める。紅にも直球勝負の質問を投げ込んだ。

 「笑いは何から勉強したらいいですか」

 紅といえば大阪出身でお笑い好き。「テレビには、その道のプロがたくさんいる。ジャンルにこだわらず見なさい」と助言された。そして、吉本新喜劇の辻本茂雄座長にはまった。

 「茂造じいさん(辻本の新喜劇キャラ)は『あさが来た』では、1人の俳優として芝居をしていた。理想のひとつでもあります」

 素直に耳を傾け、素直に目にして、素直に感じて、最後の新人イヤーも走り抜ける。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「こうもり」…こうもり博士の愉快な復讐劇… ヨハン・シュトラウス2世の傑作オペレッタ「こうもり」をもとにしたミュージカル。19世紀後半のウィーンが舞台。ファルケ博士は、親友のアイゼンシュタイン侯爵とともに出席した仮装舞踏会で泥酔。アイゼンシュタインにいたずらをされたファルケが仕返しを考え、実行していく様をコミカルに描く。

 ☆紫藤(しどう)りゅう 5月5日、東京都生まれ。10年4月「スカーレット・ピンパーネル」で初舞台の96期生。星組に配属され、11年の阪急・阪神電車「初詣ポスター」のモデルを務めた。身長174センチ。愛称「るりこ」「しどりゅー」「しゃもじ」。