俳優佐藤浩市(55)が21日、大阪市内で主演映画「64 ロクヨン」(前編5月7日、後編6月11日公開)のPR会見を行った。

 瀬々敬久監督(55)とともに出席した佐藤は、試写を見た関係者の多くが「おもしろい」と高評価をつける仕上がりに「手前みそですが、最初は一部に特化した、狭いターゲット相手と思ったけど、意外と広く受け入れられているみたいです」と笑顔を見せた。

 原作はベストセラー作家・横山秀夫氏の同名小説。昭和天皇崩御により、わずか1週間で幕を閉じた昭和64年に起こった誘拐殺人事件「ロクヨン」が、時効寸前となる中、事件の舞台となった当該県警の広報官・三上の公私にわたる苦悩、くしくも発生した模倣犯のような誘拐事件の行方など、複数のエピソードが絡み合う本格サスペンスだ。

 過去横山氏原作のドラマ「クライマーズ・ハイ」で主演経験がある。「横山さんの作品のおもしろさの1つは、話の背景の詳細がわかっていなくても、ちゃんと全体像が見えてくるところにあると思う。今回も当時と同じ印象。食ったら絶対に吐き出せないというか、他人には渡したくない作品」と確かな手応えがあるようだ。

 原作と映画の差異はある。特に後編の後半には、原作にはない「映画オリジナル」と言える大胆な加筆部分がある。脚本製作段階で瀬々監督らスタッフは横山氏と話し合いを持った。瀬々監督は「横山さんは“広報官・三上”にこだわっていらした。刑事になりたいけど、なれなくて、それでも、思っているのと違う仕事をやる中で思わぬ果実を得るだろうというような…。原作は三上の一人称で、彼の意識の中で終わっていく。私たちは“行動する三上”を描きたかった。“人間・三上”ですね」と説明。映画を見た横山氏は「映画ならではのおもしろさですね」と話したという。

 佐藤も原作との違いを認める。誘拐殺人で娘を亡くした父(永瀬正敏)との絡み。「原作よりもウエットになっています。娘を亡くした父に対する時、どうしても自分の先々のことを考えてしまったというか…。どうしても、思っていたより心の針が振れてしまった。監督と話して『そのままで行きますよ』と」。演じた役柄に対する思い入れの強さをちらつかせた。