ギタリスト布袋寅泰(54)が活動35周年を迎えた。記念アルバム「51 Emotions」を22日に発売する。本格的な世界進出を目標に掲げ、約4年前からロンドンに移住。欧州各地でライブハウス回りも行っている。念願の世界ツアー開催に向けて、初心に戻る形で地道な音楽活動を続けている。

 転機を聞くと、穏やかな笑顔で振り返った。「やっぱりBOφWYというバンドからスタートしたこと。全てのスタートで最高のスタートでした。もう1つ挙げるとすると、後に映画『キル・ビル』のテーマ曲となる曲を手掛けたこと。世界で活動する時に僕の名刺としてとても力を持っている。タランティーノ監督との出会いは、僕の人生を変えたと思います」。

 本格的な世界進出を目指し、妻今井美樹(53)と長女(13)を伴いロンドンに移住したのは12年夏。午前7時ごろに起床し、日付がかわる前に就寝する。生活スタイルは、日本にいたころとガラリと変わった。「娘の学校の送り迎えと犬の散歩。パブも夜11時に閉まるから生活は朝型になりますよね。東京では地下鉄やバスに乗らなくなったから乗れる楽しみもある。満員電車の苦しみも味わってます。楽しいですよ。縮こまりながら乗ってます。家族とはデパートや公園、食事に行ったり。ゆったり時間を過ごしています」。

 ギターやアンプなどの機材運びも自分でする。「こちらではプロもギターケースを担いでバスに乗る。東京の10倍は歩いていると思います」。

 尊敬する故デビッド・ボウイさんの公演にオープニングアクトとして出演。アルバム制作で米ロック歌手イギー・ポップをゲストに迎えたり、ザ・ローリング・ストーンズの公演にゲスト出演もした。レジェンドたちとの共演を通じて別の思いも芽生えた。「光栄と同時に、僕も若きころの自分から比べれば、ずいぶん先輩だからね。志があってカッコイイな、悔しいなという若い人に出会い、交わっていきたい。(日本のミュージシャンの)MIYAVI君なんて頑張っている。ONE OK ROCKとか刺激になりますね」。

 世界のトップアーティストに実力は認められつつあるが「戦いまで至っていないというか、スタートしたばかり。ラック(運)ではなく、自分なりに努力してきたつもりだけど」。

 2月にベルリン、パリ、アムステルダムのライブハウスで公演した。収容人数300人で半分しか埋まらない会場もあった。それも「新しい目標と向き合えたことがうれしかった」と前向きに捉えている。「BOφWY時代の初期のライブハウスを思い出しました。どうすれば人の気持ちをつかめるのか。お客さんと向き合うことで全部僕ら学んできました。あのころと圧倒的に違うのは、自分のギター、音楽に自信がある。念願のワールドツアーに向け、1歩1歩を重ねるしかない。あと5年後には、かなえたいかな」。

 生涯現役にこだわる。「これしかできない。ギターを持つ時、僕は完全になると思う。僕はギターを弾くという生き物。指が動かなくなるまでギターを弾きたいと思っています」。【近藤由美子】

 ◆布袋寅泰(ほてい・ともやす)1962年(昭37)2月1日、群馬県生まれ。81年氷室京介らと4人組ロックバンドBOφWYを結成。翌82年デビュー。88年解散し、同年ソロ活動を開始。89年に吉川晃司とCOMPLEXを結成、90年解散。ソロのヒット曲は「POISON」「スリル」「バンビーナ」など。187センチ。血液型B。