男声コーラスグループの草分け「ダークダックス」のリードテナーで「マンガさん」の愛称で親しまれた佐々木行(ささき・とおる)さん(本名通正=みちまさ)が、20日午後1時5分、心不全のため横浜市内の老人保健施設で死去した。84歳だった。11年1月にパクさんこと高見沢宏さん(享年77)、今年3月にゲタさんこと喜早哲さん(享年85)が亡くなったばかり。葬儀・告別式は近親者で行い、喪主は長女高柳木の実(たかやなぎ・このみ)さん。

 グループの中では、トークで笑いをとる役回りで親しまれたマンガさんが、逝った。1997年に一過性脳虚血発作で倒れ、その後もうつ病を患うなど療養生活を送っていた。関係者によると、親族に見守られながら、穏やかに息を引き取ったという。

 福島出身の佐々木さんは、51年、慶大在学中にゾウさんこと遠山一(86)らと活動を始め、ジャズや童謡、ロシア民謡など幅広いジャンルを歌いこなし、抜群のハーモニーと品の良さで愛された。57年に「ともしび」がヒットして、58年にNHK紅白歌合戦に初出場。「雪山讃歌」「山男の歌」「銀色の道」などヒット曲を多く生み出し、紅白にも15回出場した。旧ソ連(現ロシア)や米国でも公演を行い、93年には紫綬褒章を4人そろって受けた。87年には、メンバーが代わらない最長コーラスグループとしてギネス世界記録に認定されたこともあった。

 96年には、日刊スポーツの社歌をリメークしたこともあった。56年に作家村崎守毅さん作詞、古関裕而さん作曲でつくられた同曲を歌い、佐々木さんは「古関さんらしい曲だよ」と丁寧に説明してくれたこともあった。

 同グループは、97年に佐々木さんが倒れてから、一時的に3人で活動。11年にテノール担当の高見沢さんが心不全で亡くなって以降は、グループでの活動はなかった。また今年3月26日には、執筆活動に専念していたバリトン担当の喜早さんが急性肺炎で亡くなっていた。

 ◆佐々木行(ささき・とおる)1932年(昭7)2月18日、福島県生まれ。リードテナー。笑いをとったりマンガ的な性格から「マンガさん」と呼ばれた。趣味は登山とスキー。長野県内で山小屋を経営していたこともあった。

 ◆ダークダックス 1951年(昭26)、慶大のワグネル・ソサィエティー男声合唱団のメンバーで結成されたグループ。52年、パクさんこと高見沢宏さん、マンガさんこと佐々木さん、ゲタさんこと喜早(きそう)哲さん、ゾウさんこと遠山一さんの4人組になった。当時は真っ黒に日焼けしたいので「ダーク」、いつもあひるみたいにガーガーはもっていたので「ダックス」となった。ロシア民謡、童謡など幅広いジャンルを歌い「ともしび」「山男の歌」「銀色の道」が代表曲。多くのCMソングを歌いNHK紅白歌合戦に15回出場、93年に紫綬褒章も受章。11年1月に高見沢さんが、今年3月に喜早さんが亡くなった。