テナーサックス奏者・藤井尚之が24日、大阪市内で日刊スポーツの取材に答え、新アルバム「foot of the Tower(フット・オブ・ザ・タワー)」(2月15日発売)をPRした。

 「アルバムのコンセプトはカバー。みんなが知っている曲をあえて収録した」と藤井が説明する通り、「ミッション・インポッシブル」のテーマなど映画音楽から、「G線上のアリア」といったクラシック曲、また米歌手シンディ・ローパーの「Time After Time」まで、自身が影響を受けた曲を中心にスタンダード・ナンバーを選び、オリジナルのアレンジで表現した。例えば「禁じられた遊び」のテーマ「Romance Anonimo」は「誰もが知るメロディーだけど、クラシック・ギターの演奏が普通。それをサックスで吹くことで、聴く側は耳のギャップができる。演奏する側も遊び心とユーモアを持ってアレンジできる」と笑顔で振り返った。

 中でもこだわったのはテナーサックスだという。「テナー(サックス)が好きです。理由ですか?(ソプラノやアルトに比べて)それなりに低いところがいい」。やや低音で演奏することで、楽曲も「渋い大人の色気」をまとうようだ。「同じテナー(サックス)でも楽器によって、響きや鳴り方が違う。聴く側には微妙な話かもしれないが、演奏する側にとってだいぶ違うんです」。アルバム収録でも「相棒」の2本をスタジオに持ち込み、それぞれ曲に合う方を選び吹き分けた。1本は仏セルマー社が1930年代に限定生産した「シガーカッター」。もう1本は、30年以上愛用する同社ブランド「マーク6」だと解説するが、楽曲の細部にまでこだわる演奏スタイルは、デビューから34年一貫している。

 アルバムにはオリジナル5曲も収録。「スタジオにこもって1人になれる空間を作る。長いキャリアやっていると、自分にとっての作り方のコツみたいなのは分かっているんです」。自身と向き合いメロディーを作り、「最後に曲のタイトルを付けることが多い」。アルバムの5曲目に収録されている「bittersweets」はさわやかな印象が残る「甘くて苦い」ラブソングだが、ジョー・ガーランド作曲でグレン・ミラー楽団が演奏した名曲「In the Mood」のカバーと続けて配すことで、互いの楽曲がより深みを増すようにも感じる。アルバムタイトルの由来にもなった、東京タワーの膝元にあるスタジオで作業してできた合計11曲。「夜に似合うホットでセクシー」なインストゥルメンタル・アルバムが完成した。

 春には東名阪でライブツアー「NAOYUKI FUJII ”Special Live Theater” Vol.3『foot of the Tower』」を開催。5月19日が名古屋ブルーノート、同27日がビルボードライブ東京、同28日がビルボードライブ大阪で各2回公演。詳しくは公式サイト(http://naoyukifujii.net/)を参照。