【英ロンドン4日(日本時間5日)=近藤由美子】X JAPANがウェンブリーアリーナで初公演を成功させた。クイーンら英国の人気アーティストの曲も披露してロック発祥の地に敬意を表した。14年に米マディソンスクエアガーデン公演も行っており、ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズが達成したロックの英米2大聖地の制覇を成し遂げた。

 「Xコール」で沸くアンコール。「ストンピング」と呼ばれ、おもに欧州の音楽ファンが好む力強い足踏みが、地鳴りのように響いて会場が揺れた。約1万2000人の観客のうち8割が日本人以外の外国人。熱狂する観客から何度もアンコールを求められた。熱狂ぶりにYOSHIKIも大興奮して「Keep on rockin’!(これからもロックしようぜ)」と叫んだ。

 ようやく実現した。昨年1月、ギタリストPATAが大腸憩室炎と門脈血栓症と診断され、同3月予定だったウェンブリーアリーナ公演が1年延期された。YOSHIKIは「1年延期してごめんなさい」。PATAは「ロンドンに帰ってきたよ」と叫んだ。

 2回目のアンコール。YOSHIKIは粋な演出で喜ばせた。英国が生んだ偉大な世界的アーティスト、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディー」や、デビッド・ボウイさんの「スペース・オディティ」をピアノ演奏した。「ボヘミアン-」では大歓声と大合唱が湧き起こった。

 YOSHIKIは10歳当時、ボーカルToshIとバンドを組み、クイーンやボウイさんの曲を聴いていた。「英国のパンクロックもファッションも好き。(かつて自分もしていた髪を逆立てる)ツノ頭も英国のパンクロックから始まりましたから。Xはハードロックよりもパンク寄りだったので」。今回の公演に向けてロンドン市内で演奏練習などを行った時に使ったピアノが、クイーンのフレディ・マーキュリーさんのものだった。この日は「フレディが乗り移ったみたい」と不思議な縁を感じていた。

 「英国はロックのド真ん中で発祥の地。下手なショーをやれば辛口な意見が出る」と構成に悩んだ。「紅」など代表曲を日本語詞で歌った。「日本のバンドだと強調したかった」。3時間で20曲を披露。力尽きたYOSHIKIとToshIは、あおむけに倒れた。

 YOSHIKIは終演後「もともと反骨精神のバンドだから、パンクロックぽくやってうまく合ったかも」と語った。日本人アーティスト初の英米2大聖地制覇の快挙も「達成感はまだない。進行形にこだわっているからかな。本当の意味で挑戦が始まります」と気を引き締めていた。

 ◆ウェンブリーアリーナ 1934年に建設され、48年、12年のロンドン五輪でも使用された屋内競技場で、「サッカーの聖地」として知られるウェンブリースタジアムに隣接する。最大収容人数は1万2500人。当初X JAPANが日本人アーティストとして初公演を行う予定だったが延期となり、BABYMETALが昨年4月に行った公演が日本人初となった。