合成麻薬MDMAを飲んだ女性を救命しなかったとして、保護責任者遺棄罪などで懲役2年6月の判決を受けた俳優押尾学被告(32)の保釈請求が28日、却下された。弁護団は同被告の意見を聞いた上で協議し、近日中にも東京高裁へ抗告する予定。またこの日、東京地検が1審の東京地裁判決に対し控訴しないと決めた。東京地検特捜部元副部長の若狭勝弁護士(53)は押尾弁護団が抗告した場合、東京高裁が保釈を認める可能性もあると指摘した。

 押尾被告の強い願いは、またしてもかなわなかった。昨年12月7日に麻薬取締法違反(譲渡)容疑で逮捕され、1月25日に保護責任者遺棄致死罪で追起訴された後、2月3日に最初の保釈請求をしてから今回で8回目だが、すべて却下された。逮捕から215日。東京拘置所に拘置されたままの押尾被告には、この日のうちに棄却の事実は伝えられなかった。

 1審の裁判員裁判では、昨年8月2日に亡くなった田中香織さん(享年30)の死と遺棄との因果関係が争点となったが、東京地裁は救命可能性が確実だったとは言えないとし、保護責任者遺棄致死罪の成立を認めなかった。弁護団は致死が取れたことで、保釈を認める可能性が高くなるとみていた。押尾被告にも「今回が可能性は一番高いと思う」と話し、同被告も「期待しています」と前向きだったという。押尾被告は保釈金1000万円を想定し、支払う準備も出来ていたという。

 しかし、請求は却下された。決定を受けて弁護団の野島慎一郎弁護士は「在所隠滅や逃亡の恐れがあるという判断だと思いますが、裁判も済んで証拠隠滅の恐れもない。おかしい」と失望感をあらわにした。その上で「却下の内容を見てからですが、明日以降、東京高裁に抗告する予定です」と話した。

 ただ、若狭弁護士は、押尾弁護団が抗告した場合、東京地裁が認める可能性は「6割程度ある」とみている。同弁護士は地裁で却下された保釈が、高裁で認められるケースが最近増えていると指摘。「地裁も今日までは、検察が控訴するかしないか分からない状態で、致死の可能性が残っているなら保釈はどうか…という部分があったと思う。ただ検察が控訴しなかったことで事実上、遺棄致死は問えなくなった。高裁がそこを踏まえて保釈する可能性は地裁より高い」と話した。

 [2010年9月29日9時35分

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