北野武監督(ビートたけし=66)が、首相官邸に乗り込んだ。19日、アジアとの関係強化を目指す安倍政権に文化面からアドバイスする「アジア文化交流懇談会」の初会合に出席。政府関係の会議メンバーになるのは初めてだったが、ロールスロイスに乗って登場。会合後は「首相は喜んで俺の話を聞いてくれた」と話すなど、「世界のキタノ」の存在感を見せつけた。

 ロールスロイスが官邸に入ると、報道陣からどよめきが起こった。登場した北野監督はカジュアルなグリーンのジャケット姿で、堂々と安倍晋三首相の隣に座った。会議が始まる前から談笑し、緊張した様子はまったくなし。「アジア文化交流懇談会」の11人のメンバーの中でも、際立った存在感だった。

 懇談会は約1時間半行われ、デザイナーのコシノジュンコさん、森田健作千葉県知事らが文化交流について話し合った。「総理にしたい有名人」のアンケートを取れば上位の常連、政治討論番組では政治家、評論家と議論を戦わせてきたが、政府関係の会議メンバーになるのは初めて。終了後、北野監督は「俺なんか場違いな感じがして。国際交流基金を通じて、ずいぶん映画に援助してもらったので、恩返しのつもり。俺の言うことなんて役に立たないけど」と謙虚に語った。

 しかし、しっかり提言もしていた。映画などにおける著作権の話をし、話題はスポーツにまで及んだ。「日本、台湾、韓国、中国で、アジアのチャンピオンを決める(野球の)リーグを作るべきだと言った。サッカーも同じ。そういう方向からやらないと、尖閣、竹島の問題があって、政治的問題はうまくいかない」と話したという。安倍晋三首相の反応を聞かれると、「安倍さんは今、イケイケなので一気に文化交流まで突き進もうと力が入っている。喜んでたよ」と手応えを感じた様子だった。

 官邸訪問は小泉純一郎元首相の時以来11年ぶり2回目で、この日は当時、小泉首相の秘書官を務めていた飯島勲内閣官房参与を訪ねた。「俺みたいなのを呼ばないといけないから大変だよね、って言ったら『俺が呼んだわけじゃない』って言ってた」と笑わせた。懇談会は今後5回開かれ、秋までに提言をまとめるが、それを念頭に「くだらないことをやらなくなるわけじゃない。相変わらずやるけど」と話し、官邸を後にした。

 北野監督は98年、映画「HANA-BI」が、日本映画としては初めて韓国で一般上映されたり、今年は「アウトレイジ

 ビヨンド」が香港の映画祭で監督賞を受賞した。その経験や、アジアでの高い知名度が、政権にも期待されている。

 ◆「アジア文化交流懇談会」主なメンバー

 北野武(映画監督)井上弘(民放連会長)コシノジュンコ(デザイナー)迫本淳一(松竹社長)森田健作(千葉県知事)=敬称略