23日に投開票された衆院東京10区補選で、小池百合子都知事の後継として、若狭勝氏(59)が勝利し、小選挙区で初めて当選した。午後8時、投票締め切りとほぼ同時刻、NHKや民放各局が当確の報を打った。

 若狭氏はこれまで3回、選挙を戦っているが、実は午後8時の当確は、初めてだ。投票締め切り直後にメディアが当確を打つ候補者は、「圧勝」の代名詞のようなもの。若狭氏は、当確を決めた後のあいさつを、「午後8時ちょうどの当選確実ということになりまして、まずは有権者の皆さん、関係者の皆さん、支援者の皆さんにお礼申し上げます」と、切り出した。

 午後8時に選挙戦の結果が、しかも当確という良い結果として出ることに、喜びをかみしめていたのではないか。そんな表情にみえた。

 なぜ、そう思うかと言えば、若狭氏の1度目、2度目の選挙の結果は、日をまたいでようやく、もたらされたからだ。

 しかも最初の選挙(13年7月の参院選比例代表)では、最後の最後、48議席目をめぐり、自民党の候補と激しく競り合った末、最後の1議席に滑り込めず、議席を目の前にしての惜敗だった。結果が出たのは、なんと投開票日翌日の午前6時過ぎ。票差は、わずか344票差。心身ともにすり減るような思いをしながら、敗れてしまった。

 あの日、若狭氏に初当選の可能性が出てきたことを受けて、深夜2時ごろ、足立区にあった若狭氏の選挙事務所へ取材に向かった。若狭氏は別の場所で待機しており、事務所には不在だったが、多くのテレビカメラや取材記者が集まり、開票を伝えるニュースとにらめっこしながら、若狭氏の当確は出るのか出ないのか、待ち続けた。

 7月の朝は、明けるのが早い。事務所の窓から見える空が、だんだん白んできたことを覚えている。若狭氏は、リードしたかと思えば逆転され、再び逆転する、めまぐるしいデッドヒートの末、午前6時過ぎに、自民党比例代表の「次点」が確定。若狭氏は、事務所に現れて、敗戦の弁を述べた。「力不足は事実だが。やるだけのことはやった、すがすがしい気分です」。意外すぎるほど、さばさばした表情だった。

 若狭氏は、2度目の挑戦となった14年衆院選比例代表で初当選したが、この時も、当確が出たのは、日をまたいだ、翌日の午前0時を回っていた。

 今回、小池百合子都知事の全面支援で、選挙区を引き継ぐことになった若狭氏。過去の2回、きりきりした思いで戦況を見守っていたはずの午後10時半には、メディアの取材もほぼ、終わっていた。

 三度目の正直で得た「8時当確・初体験」になるが、自分の選挙区を持つということは、それだけ責任感も増すことになる。ただ、若狭氏にとっては、トラウマともいえる過去の選挙と対照的な「戦いの後」の気分だったことは、間違いない。