<陸上:織田記念国際陸上>◇最終日◇29日◇広島ビッグアーチ

 期待の早慶コンビがロンドン五輪注目候補に名乗りを上げた。男子やり投げでは、英国人の父を持つディーン元気(20=早大)が自己記録を5メートル以上も更新する日本歴代2位の84メートル28をマーク。昨年の大邱世界選手権4位に相当する好記録で、五輪参加A標準(82メートル00)を突破した。男子100メートルでは山県亮太(19=慶大)がA標準を0秒02上回る10秒16で優勝。女子100メートルの福島千里(23=北海道ハイテクAC)は、11秒34で今季国内と屋外での初戦を制した。

 名前の通りまさに元気いっぱいだった。ディーンの1投目、いきなり広島の空にアーチをかけた。「リリースの感覚、やりの軌道、手ごたえがあった」。投げてから倒れ、立ち上がり、右人さし指で「1」とつくった。自己ベストを一気に5メートル以上も更新する84メートル28。「何も覚えていないです」。早大生は喜びのあまり泣いていた。

 彫りの深い顔で「親孝行できました。大満足です」と声を弾ませた。客席の父ジョンさん(57)は英国ニューキャッスル生まれ。剣道を学ぶために来日し、母博子さん(56)と出会った。ディーンが英国に行ったのは7年前、中学2年が最後。「おばあちゃんにも長いこと会ってないです。前は小さかったから今度行ったらビックリするかな」。

 今が成長期だ。一冬で182センチ、85キロの肉体が進化した。筋力トレでは昨秋に比べてベンチプレス10キロ、スクワットが30キロも増えた。2月にフィンランドとスペインで合宿。流ちょうな英語で外国人と積極的に会話して「世界でやれる、と気付かされた」。バランス感覚を養うため体操も練習に取り入れ、体が開かないようフォームも直した。

 日本では89年に溝口和洋がマークした87メートル60に次ぐ記録。第一人者の村上幸史(スズキ浜松AC)を抑え、昨年の世界選手権4位相当の距離を投げた。明るい性格の人気者は「関西弁と英語はできるけど、標準語は難しい。一発屋と言われないようにせなあきませんね」。日本選手権で優勝すれば代表に内定する。見開いた大きな目は「実は行ったことのない」というロンドンを見ていた。【近間康隆】

 ◆ディーン元気(げんき)1991年(平3)12月30日、神戸市生まれ。平野中から陸上競技を始め、中3の全日中で砲丸投げ4位。やり投げは市尼崎で始め、09年総体はやり投げと円盤投げの2冠。砲丸投げと円盤投げは3年連続で総体出場した。早大進学後はやり投げに重点を置き、10年日本選手権3位、昨年の日本選手権はこれまでの自己ベスト79メートル20で2位。昨年のアジア選手権は76メートル20で7位入賞。趣味はヒップホップ系の音楽鑑賞。182センチ、85キロ。血液型A。