新潟のDF西村竜馬(23)が第2ステージ第12節横浜戦で、カップ戦を含めて今季4度目のスタメン出場を果たした。3バックの一角に入り結果は1-3の完敗。この敗戦で新潟は年間順位14位から15位にJ2降格圏と背中合わせに。西村はクロスの処理、1対1の対応と失点に絡むシーンもあった。「もっと相手に寄せなければならなかった」、「うまく対応されてしまった」と試合後、敗戦の弁を述べた。

 プロ5年目。Jリーグデビュー戦は今年5月のナビスコ杯予選柏戦。この試合を2-1でものにした。「緊張しました。頭の中が真っ白だった」。デビュー戦にありがちな、初々しいコメントを残した。それから4カ月。発する言葉の内容は変わった。その変化が西村にとっては意味がある。

 今季、期限付き移籍していたJFL沼津から新潟に復帰した。12年に新潟ユースからトップ昇格。同期入団はFW鈴木武蔵(22)。当初から注目されていた鈴木とは対照的だった。3月にはブラジルのグレミオ・エスポルチーボ・マウアエンセに期限付き移籍した。翌年は北信越リーグ、JAPANサッカーカレッジ、14、15年と沼津へ。今季、4年間の「武者修業」を終えて新潟に戻った。

 ヒゲをたっぷり蓄えた野武士ような風貌。ぼくとつな話しぶり。華やかさはないが、外見に違わないしぶとさがある。練習時から見せるファウル寸前の球際の厳しさ、「J1はテレビで見ている選手ばかり。だからプレーはわかりやすいです」。対戦相手の印象を、ずぶとくこう答える。

 ブラジルではチームメートと殴り合いになるような雰囲気の中でポジションを争った。日本の下部リーグでは洗濯から練習の準備、後片付けとユース時代と同じように自分たちで行った。期限付き移籍とはいえ、「もう新潟には戻れないかも」と思ったことは1度や2度ではなかった。だから今季、初めて新潟の公式戦ユニホームを身に着けて「絶対にJ1でプレーし続けたい」と自然と感じた。

 残留争いの最中に出場機会が訪れた今、うれしさはない。あるのは責任感。「出ている以上は勝たないと」。昨年までは感じたことのないプレッシャーがある。そんな実感も、試合でのコメントの変化も、4年間の成長の証し。

 粘り強く、泥くさく。それを体現できる西村が、苦境にあえぐ新潟に火を付ける存在になる。


 ◆斎藤慎一郎(さいとう・しんいちろう)1967年(昭42)1月12日、新潟県出身。15年9月から新潟版を担当。新潟はJ2時代から取材。サッカー以外にはbj、Wリーグのバスケット、高校スポーツなど担当。