外国籍の選手がJリーグで活躍するためには、日本の文化に慣れることも重要だと思います。言葉や食生活に加えて、歴史や礼儀も大切な要素と言えます。

 今季から清水エスパルスに加入したDFカヌ(31)は、ブラジル人センターバックです。ブラジルのポルトなどを経てタイのブリラムに初めて海外移籍を経験し、5シーズンに渡ってプレーしました。日本にやって来てまだ8カ月ですが、すっかり日本になじんでいます。

 リーグ戦では、ロッカーアウトをした選手が、整列前に主審とコミュニケーションを取ります。すね当てやスパイクの確認をするためです。そのとき選手は審判団と握手をかわしますが、カヌのあいさつは、ひと味違います。審判に笑顔で近づくと、真正面に立って腰を45度曲げ、きっちりと頭を下げるのです。その姿を見て、とても驚きました。

 礼儀を重んじ、丁寧なあいさつをする理由は「サッカーは選手だけではなくて、審判やスタッフ、サポーターなど全員がいて成り立つスポーツ。いつもリスペクトの気持ちを持っています」とのこと。実はタイでプレーしていた期間に、現地のあいさつが身についたそうです。タイでは、胸の高さで手を合わせ、お辞儀する伝統的なあいさつ「ワイ」というものがあります。日本では手を合わせる動作はしていませんが、お辞儀をする習慣は変わりません。

 カヌの順応性の高さは、言語にも表れています。母国語であるポルトガル語に加え、英語、タイ語も操るトリリンガル。現在はポルトガル語の通訳から日本語を習い、次々と単語を記憶。「日本語で話そうと思っても、時々タイ語が出ちゃうんだよ」と言いながら、チームメートに日本語で冗談を言うなど、積極的に話しかける姿があります。試合中はチームメートに指示を出すことも、センターバックにとって重要なポイントです。「今は、日本で生活している。早く日本語でコミュニケーションを取れるようになりたいと思っている。通訳がいらなくなるくらいにね(笑い)」。ピッチ内での活躍だけでなく、ピッチ外での姿勢も、見逃せません。【保坂恭子】


 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ。埼玉県育ち。10年入社。サッカーや五輪スポーツ取材を経て、15年5月から静岡支局に異動。今年はJ1清水とJ3藤枝の担当。カヌのもう1つの注目ポイントは、髪形。アフロバージョンと、コーンロウバージョンの2パターン。本人いわく、コーンロウの時の方がゴールが取れるそう。