サッカー日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(63)が日刊スポーツなどのインタビューに応じ、日本の課題などを大いに語った。昨年3月に就任し、W杯アジア2次予選は5勝1分けでE組首位に立つ。事あるごとに日本サッカーに物申す強烈なキャラクターで存在感を示す指揮官は、大事なW杯アジア最終予選の待つ16年の年頭に、あらためて日本を「世界の3部」と位置付け“昇格”への意気込みを示した。

 ハリルホジッチ監督は日課の約1時間のランニングを欠かさず、ほぼ毎日、日本サッカー協会の入るビル、東京・文京区のJFAハウスに通勤してくる。歴代の外国人指揮官で、こんな行動をする者はいなかった。

 「勤勉な人でないと、私と一緒には働けません」と言い切る指揮官は、勤勉な日本人と日本の文化がお気に入りのようだ。サッカーから文化、人間性まで日本に対しての分析を進め、課題を口にする。

 「生活面で、個人でイニシアチブ(主導権)を取る人が少なく、イマジネーション(想像性)を持って生活できていない。それが残念ながら試合に出てしまっている。試合中、私から100の指示を与えることはできない。選手がイマジネーションを持って自分でイニシアチブを取るということが必要。私は選手の時、自分でイニシアチブを取っていた。FWですから、自分の考えを出さないといけない。

 あえて自分からするという習慣がないのかもしれない。ただ(その性質から)守備の組織面は素晴らしい。言ったことをしっかりやる日本の気質が生きると思います。ただ、攻撃面は指示通りだけではないことも必要。相手を驚かすようなことも、自分から生み出さなければならない。例えばバルセロナはどうですか? もし組織でうまくいかなければネイマールやメッシが自分の判断で突破を図ります」

 日本サッカー、特に代表チームの基盤となるべきJリーグの現状に危機感を抱いている。事あるごとに声高に叫ぶ。各方面で物議を醸してきたが、信念があるから何度も口にする。

 「国内リーグについていろんな疑問を抱いています。Jリーグからこの4年で何人が海外に移籍しましたか? 本田、シンジ(香川)の後にです。彼らに代わる選手は誰なのか? 彼らに代わる選手がいないというのが日本の将来のフットボールに関しては不安です。

 欧州ではまったく違うプレーをしている。リズム、アグレッシブさ、フィジカル、戦う意識…。Jリーグとはまったく比較にならない戦いをしています。まったく違うサッカーをしている。

 日本で、日本のフットボールの中にいると欧州の強豪国のリズムを忘れてしまう。土日も寝ずに試合を見ることはできるが、そういったことが少し心配です。日本の人たちは現代フットボールから遠ざかっている人たちが多いのではないか? と。Jリーグのレベルを上げるにはどうすればいいのか考えないといけない。特に戦う意識。フィジカル的に戦う意識がJリーグではどうなのか…」

 就任直後から言い続ける厳しい言葉がある。素直に受け取ることは難しいかもしれないが、客観的にみると分かりやすい表現だ。

 「今、日本は53位。FIFAランクの1~20位が1部、21~40位が2部、41~60位が3部で我々は世界の3部リーグにいる。まず2部リーグに上がることが目的になる。そして上位20位以内にいつか入りたい」

 14年W杯ブラジル大会でアルジェリアを率い、16強まで導いた。退任後だったが、この時は実際に同年10月の同ランキングで同国は15位となり“1部昇格”している。16年は厳しいW杯アジア最終予選も待つ。厳しいことを言い、提言する論客のような働きではなく日本代表チームの結果で語り、周囲を納得させなくてはならない。そんな勝負の2年目が幕を開けた。【八反誠】

 ◆バヒド・ハリルホジッチ 1952年5月15日、旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナ生まれ。現役時代はフランスで2度の得点王。旧ユーゴスラビア代表として82年W杯スペイン大会出場。引退後はフランスのパリサンジェルマン、リールなどで監督歴任。コートジボワール代表監督も務め、14年W杯ブラジル大会ではアルジェリアを率い16強に導いた。