ロンドン五輪出場を目指すなでしこジャパンのアジア最終予選突破構想が見えた。直前合宿2日目の23日、チームは地元男子大学生と練習試合を行った。中国での最終予選は、11日間で5試合を戦う。コンディション維持が大きな課題となる中、佐々木則夫監督(53)は、MF沢穂希(32)ら主力を温存した場合の布陣をテスト。タイ戦(9月1日)韓国戦(3日)でいかに大量リードし、沢らを途中交代で温存できるか。日程、対戦国ともに厳しい条件下で、ターンオーバー制に望みが見えてきた。

 指示を出す佐々木監督の声は、観客の声援にもかき消されないほど力がこもって大きかった。「もっと詰めてもいいぞ!」。

 吉備国際大の男子サッカー部との試合形式(12分×3本)の2本目。沢、阪口、宮間の主力MF陣や、岩清水、熊谷の両DFの姿はなかった。主力組の1本目に変え、W杯でベンチだったMF宇津木、田中、矢野、上尾野辺のDF陣をピッチに並べた。

 続く3本目も、“控え組”を起用。それは、予選突破のカギを握る、合宿最大のテーマ、「ターンオーバー制」のテストだった。

 2、3本目とも押し込まれたが、失点は3本目の終了間際だけ。佐々木監督は「まだまだですが、ある程度はやれている」と言った。予選突破の戦略が見えてきたのか「これからいろいろ確認していくつもりです」と、練習場を後にした。

 最終予選は過密日程との戦いだ。中1日、中2日での連戦が続く。特にオーストラリア戦は非常に大切になる。いわば天王山だ。ここで敗れると、残り北朝鮮、中国との2戦で連勝が絶対条件の崖っぷちもあり得る。オーストラリアには昨年のアジア杯準決勝で敗れており、この試合を軸に、いかに主力をいい状態でそろえるかにかかっている。

 そのためには、タイ、韓国戦で、主力を早い段階で交代させるか、ベンチスタートで温存するのか。その戦略には、リードを確実に保ったまま勝ちきるボランチの宇津木、田中が必須になる。さらに岩清水、熊谷、鮫島らDF陣にアクシデントがあった時に慌てずにすむように矢野、上尾野辺らを試せたことは大きい。

 練習後、沢は「(監督に)聞いてください」と、選手起用への質問を予期してか、口をつぐんだ。ここからは主力、控えの線引きが明確になり、それぞれが自分の役割を自覚して、団結力を高めていく。ロンドン五輪の切符は、意思統一された総力戦が大きなカギになる。【松田秀彦】