日本代表FW清武弘嗣(22=C大阪)が“先発テスト”を受けた。W杯アジア最終予選の初戦オマーン戦(3日、埼玉)に向け5月31日、急きょ立正大と練習試合を行い、6-0で勝利。清武が先発起用され、試合後にはアルベルト・ザッケローニ監督(59)から愛のムチを受けた。大きな期待を受けて、22歳が初めての最終予選に挑む。

 主力の香川、本田らに交じって試合前のアップを始めたのは、清武だった。ザッケローニ監督の要望で組まれたW杯アジア最終予選直前の練習試合で、2列目の右サイドで先発し、45分間プレーした。ロンドン五輪代表とA代表にダブル招集されている期待の逸材が、最終予選の切り札になる。

 試合には6-0で大勝したが、清武の表情はさえなかった。出場した前半は大学生を相手に攻めあぐね、2点しか奪えなかった。攻守にわたって迷いながらのプレーが多く、思い通りの連係ができなかったという。試合後には監督に呼ばれ、直々に厳しい言葉を受けた。「監督の求めることができなかった。攻撃に関して多く言われたが、落ち込んでいても仕方ない。切り替えるしかない」と反省したが、叱責(しっせき)の言葉は、期待の裏返しでもある。

 同じポジションを争うのは、代表歴5年の岡崎だ。51試合出場で27得点を挙げている、強力なライバル。「岡崎さんはゴールに向かう気持ちがすごい。それが数字に表れている」と話す清武は、ここまで先発1試合、途中出場4試合で無得点と先輩には及ばない。

 それでも、初体験の最終予選に「いつも通りです」とサラリと話す強心臓の男は、大きな可能性を秘めている。出場5試合で4アシストの数字を残しており、C大阪時代にプレーしている香川らとの相性の良さは、実証済み。代表デビュー戦となった昨年8月10日韓国戦。前半35分に岡崎と交代して出場すると、連係から2アシスト。2点とも、清武からのパスにダイレクトで合わせるゴールで、息の合ったプレーを見せた。

 7月からはドイツ1部ニュルンベルクへの完全移籍が決定しており、さらなる伸びしろが、ザッケローニ監督にも見込まれている。「アシストもゴールも両方の数字を伸ばしていきたい。先発でも途中でも、試合に出たら、役割を果たしたい」。アシストのできるゴールゲッターとして結果を残し、生き残り戦線に踏みとどまる。【保坂恭子】