<アジアCL:川崎F3-2G大阪>◇24日◇決勝トーナメント1回戦◇万博

 2年ぶり2度目の出場の川崎Fが、昨季の王者G大阪にアウェーで3-2で逆転勝ちし、2度目の8強に進出した。日本代表MF中村憲剛(28)が、0-1の前半33分に左足でゴールを決めた。後半31分にはFWレナチーニョのゴールを、後半40分にもスルーパスでFW黒津の決勝ゴールを演出。定位置を取り返した代表同様、2列目中央で全3得点を生み出した。

 左足から放たれたシュートは、矢のようにゴール左隅を貫いた。前半33分、FWレナチーニョからのパスを受けた中村は、ゴール前ににじり寄ると迷わずシュートした。「打つしかない。ゴール前に相手も多くて、GKのブラインドになると思った。パスでなくシュートを打てたのは進歩だし、ああいう感覚は必要」。自らの進化をかみしめながら右手を天に突き上げた。

 この日は代表と同じ2列目中央で、攻撃のタクトを存分に振るった。今季は代表でもチームでも、攻撃面での成長を期待されていた。04年に中村をトップ下からボランチへとコンバートした関塚監督は、今季から再び2列目で起用する機会を増やした。「チームも個人も研究されてきた。幅を広げるのが大事。オレは(イタリアMF)ピルロになれと言っていたが、(イングランドMF)ジェラードもいいんじゃないか」。日本代表の岡田監督と同様、中村をワールドクラスの代表の中盤にたとえた。

 17日のW杯アジア予選オーストラリア戦前に38度を超える熱を出し、20日のJリーグ大分戦はベンチ外となった。ただ休養はせず、その日の午前に極秘練習を敢行し、筋力トレーニングで体をいじめ抜いていた。その成果が出て、後半に入っても足は止まらなかった。特に後半40分の決勝点を演出したパスは、決めた黒津も「パスのタイミング、質も全部分かっていた。それがつながった」と納得するほどの、美しいものだった。

 終了間際にDF加地と激突し、担架で運び出された。ロッカー室から左足を引きずって出てきた姿は痛々しかった。それでも笑みを浮かべた。「今、うちにレギュラーはいない。動きが悪ければすぐ変えられる。いい勝ち方じゃないけど、G大阪に勝てたのは自信になる」。敵地万博での勝利はなんと10年ぶり。2年前の8強進出とは、意味も価値も違う勝利だと、中村自身が最も感じていた。【村上幸将】