仙台は同じ被災地クラブ、鹿島との一戦を1-0で制して今季ホーム初勝利を挙げた。東日本大震災から5年を迎えてもクラブの宿命は変わらない。被災地の「希望の光」となるべく走り続ける。

 もう1度、希望の光になる。ホームタウンに甚大な被害をもたらした震災から5年と1日。「全ての仲間にありがとう。故郷を取り戻すまで俺達は負けない!」と書かれた横断幕が仙台ベンチの正面に掲げられた。渡辺監督が「特別な試合。今日ここで思いをぶつけなければいけない」と位置づけた一戦で選手は必死に走り、仙台らしい堅守で昨年8月12日の松本戦以来、7カ月ぶりのホーム白星を勝ち取った。

 渡辺監督は会見でしみじみと語った。「5年前の今日、行われるべきゲームはできませんでした。あれ以来、ユアスタに足を運ぶことができなくなった方もいる」。5年前、名古屋戦の前日に地震が起きてリーグ戦は中断。選手たちは練習どころではなくなり、ボランティア活動に明け暮れることになった。

 当時監督を務めたU-23日本代表手倉森監督は「希望の光として戦う」と言った。その姿勢は今も受け継がれている。だが、震災以降に躍進したのは2位になった12年だけ。近年は残留争いを繰り広げるほど低迷した。昨季はホームで勝てない日々が続き、渡辺監督は「果たしてどれくらい光となれているのだろうか」と自問自答を繰り返した。

 被災地に元気と勇気を届けることが使命のクラブにとって、この日の勝利は格別だ。渡辺監督は「何事もなかったかのように鹿島と試合ができ、勝利を収められたことに感謝したい。満足せずに歩みを進めていきたい」。決勝弾を決めた茨城県出身のMF金久保は「津波で友人の家が流されたり大きな被害があった」と明かし「相手が鹿島ということで絶対勝ちたいって思っていた」と声をはずませた。

 躍進した12年シーズンは3月10日の開幕戦で鹿島を破って開幕9戦負けなしと勢いに乗った。第3節を終え4位タイ。目標のトップ5どころか初優勝も狙える位置だ。【成田光季】

 ◆3・11前後の仙台ホーム戦成績 仙台は東日本大震災翌年の12年以降、3月11日に最も近い本拠ユアスタでの試合で4勝1分けと無敗を誇る。12年は10日に鹿島を1-0で下し、13年は16日に柏と対戦。2-1で勝利した。14年は15日にG大阪と0-0。後に3冠を達成する強豪と引き分けた。15年は7日に山形との東北ダービーを2-0で制している。今季も鹿島に勝って不敗記録を伸ばした。