<J1:浦和2-1札幌>◇第31節◇8日◇札幌ド

 日本代表FW田中達也(25)の活躍で、浦和が2-1で札幌に逆転勝利した。前半28分にポストのはね返りを押し込み、今季2得点目となる同点弾。田中達は後半34分にベンチに退くも、この一発が流れを変えて、浦和は公式戦3連勝となった。順位も前節の5位から暫定2位に浮上し、逆転優勝へ望みをつないだ。

 真っ先に反応したのは、2列目の田中達だった。1点を追う前半28分、ポスト直撃となったMFポンテのシュートのはね返りを待っていた。「ロビー(ポンテ)がいいシュートを打ったのではね返りを入れるだけでした」。7月27日鹿島戦以来となる今季2得点目が同点弾。前日7日に代理人を通じて今冬の欧州移籍を熱望したばかりのFWが、浦和に充満していた重苦しい空気をぬぐい去った。

 窮地のエンゲルス監督に「恩返し」した。同監督はクラブから来季ACL出場権を得られる3位以内を厳命されている。先月11日、田中達に次女麗愛(れいら)ちゃんが誕生したが、同監督の計らいで練習マッチ出場を回避。愛娘誕生に立ち会った。同日午後には、同監督が別メニュー調整に付き合ってくれた。その個人特訓から約1カ月後となるこの日は、次女誕生後初のリーグ戦先発だった。「最初から飛ばしてチームが勝てばいい」。優勝圏内となる暫定2位に浮上させる一撃で、心優しい同監督の期待に応えた。

 次女誕生後初得点にも、ゴールパフォーマンスはなかった。「そんな余裕はないですよ。アウェーで1点目を取られると厳しいので」と、後半34分に交代するまで走り続けた。序盤から豊富な運動量でリズムをつくった自負もある。「(勝因は)勝ちたい気持ち。みんなで取った勝ち点3」と、チームメートを誇らしげに見つめた。

 10日からは9月6日のW杯最終予選バーレーン戦以来、日本代表に合流する。心配される右太もも筋膜炎の影響については、視察した日本代表大熊コーチが「動きが良くて頑張ってくれていた」と言えば、本人も「(全快まで)もう少しと思う」と問題なしを強調した。「次は代表で頑張れたらいいと思う」。浦和のため、日本のため、自身の夢のため、田中達は全速力で突っ走る。【浜本卓也】