<J1:広島1-0仙台>◇第33節◇27日◇広島ビ

 まだ試練は続く。仙台が過去3勝3分けの広島に0-1で敗れ、残留を最終節(12月4日=ホーム川崎F戦)に持ち越した。試合前に勝ち点6差の16位神戸が清水に勝ったため、引き分け以上で確定。自力で決めるべく相手の猛攻をしのぎ続けたが、2試合続けて後半ロスタイムに失点した。

 また同じ悪夢だ。0-0でロスタイムに突入してから、わずか15秒後。広島MF山岸の右クロスにMF大崎が反応し、頭でコースを変えてゴール右に流し込んだ。「相手3、4人に飛び込まれて対応できなかった」とDF鎌田。最後の最後に与えたフリースポットを突かれた。ひざに手をつき、倒れ込む選手。残留が、手からこぼれ落ちた。

 試合終了後、MF斉藤の怒りが沸騰した。地面をたたき、声にならない声を上げ、芝を蹴ってチームメートに怒号を浴びせた。「何で試合が終わってへんのに下を向くんや!」。失点後、約3分は残っていた。

 怒り心頭で戻ったロッカールームでも「ひと言いいですか」と切り出した。「失点した後、倒れるんじゃなく、立ち上がって追いつこうとする意志が感じられなかった」。前節新潟戦に続くロスタイム被弾の原因は、厳密には分からない。ただ、一因の精神面を嫌われ役になって引き締めた。

 京都時代の06年には、練習試合で負け「このチーム、バラバラやんけ!」とわめき散らし、当時の柱谷監督から怒鳴り返された。「文句があるなら話し合え!」。同クラブで昇格3度、降格3度、残留2度という壮絶な経験をしただけに黙っていられない。斉藤は「サボってる選手がいるわけじゃない」と強調した上で「例えば相手のMFミキッチは、うちがセットした球を蹴って邪魔して、反スポーツ的行為で警告を受けてまで勝利への執念を見せた。何が何でも残留する気持ちが必要」と言った。

 食事中は、チームNO・1のムードメーカーに変身する男の怒りだからこそ、心に響いた。手倉森監督は「悔しい結果だけど、胸にたまってるものを吐き出したことで最終節に向けて奮い立った」。16位神戸とは勝ち点3差で得失点差は+6。優位でも残留を決めるだけでは満足できない。この悔しさを晴らすべく闘志を見せて、勝って、笑顔の集大成にする。【木下淳】