<J1:大宮2-2浦和>◇第14節◇11日◇NACK

 U-22(22歳以下)日本代表の浦和FW原口元気(20)が、劇的同点弾を決めた。後半33分、大宮DFに倒され、顔をピッチにこすりつけながら、執念で左足でシュート。「転んでもタダでは起きない」弾は、勝利への激しい気持ちの表れだった。試合後には悔し涙を流し、リーグ戦4試合連続の引き分けに、不満をあらわにした。

 芝に右頬をこすりつけながら、揺れているサイドネットだけが目に入った。1-2で迎えた後半33分、DF宇賀神からのパスを受けて、左サイドからゴール前へ一気にドリブルで仕掛けた。大宮DF2人に挟まれ、ペナルティーエリア内で倒された。上半身はピッチに強く打ちつけられ、ボールは視界から消えた。それでも、研ぎ澄まされた神経で、弾んだボールに左足をミートさせた。

 倒された体勢のまま放たれたシュートは、原口の気持ちを乗せてネットを揺らした。「ゴールは見えていなくて、感覚で打った。あれは、気持ちで入ったゴールです。自分でも入ると思わなかった」と、淡々と振り返った。

 試合終了後には、盛大な原口コールを受けた。サポーターにあいさつをし、ベンチに戻る原口の目には、涙があふれていた。チーム関係者が「ピッチの上では初めてだと思う」と話す悔し涙に、この試合にかける思いが詰まっていた。「サポーターの方が試合後に名前を呼んでくれて、いろんな感情が出てしまいました」と、照れを隠すように早口で話した。

 前半の悔しい思いが、後半の激しさを生んだ。立ち上がりから苦しい展開が続き、セットプレーから失点。主導権は相手にあった。その中で原口は、同じくU-22代表の大宮MF東と度々マッチアップ。1対1でボールを奪われ、パスをカットされた。「同世代のヤツに止められているのがむかつく。絶対にブチ抜いてやろう、突破してやろう」。いつもに増して言葉に、力がこもっていた。

 ロンドン五輪予選に向けて、景気づけの1発だった。日頃から情熱について語っているペトロビッチ監督も「元気がいいプレーをした。試合に勝って五輪予選に行きたいという強い気持ちがあった」と、認めた。原口が浦和から、熱い気持ちと元気を持っていく。【保坂恭子】