<J1:東京0-1清水>◇第8節◇28日◇味スタ

 9人の執念が上回った!!

 アウェーの清水が2人も少ない超劣勢の中、東京から貴重な勝ち点3をもぎとった。後半11分にFWジミー・フランサ(28)、同28分にもMFアレックス・ブロスケ(28)と、立て続けに退場者を出した。しかし、同32分にカウンターから途中出場のFW高木俊幸(20)が、強烈な一撃を決めて先制。この虎の子の1点を、日本代表候補のGK林彰洋(24)を中心に最後まで守りきった。

 我慢の末に「その瞬間」は来た。後半ロスタイム。容赦なく襲いかかる何本ものシュートを。嵐のように降り掛かるクロスを9人が必死に体を投げ出し、最後まではね返し続けた。ついに、歓喜を告げるホイッスルが鳴る。GK林は「全部カウントされたら30本以上のシュートを打たれたが、全員が集中していた」。

 今までに味わったこともない、苦しくて長いロスタイムの5分間。2人の退場者を出す絶体絶命のピンチを乗り越えた“ナイン”は、沈黙する東京サポーターの前で何度も抱き合った。試合後、アフシン・ゴトビ監督(48)も「9人以下にならないように願っていたよ。ただ、9人だろうと我々の方が良いチームだった」と、胸を張った。

 起死回生の一撃を決めたのは、FW高木だった。後半32分、右サイドを駆け上がったFW高原のパスを中央で受け取ると、DFを背負いながらも右足一閃(いっせん)。豪快に、ゴール右上に突き刺した。

 今季公式戦チーム最多タイの4点目。しかし、移籍1年目の昨季2得点も含め、アウェーでのゴールは1度もなかった。それを理由にこの日、今季初めて先発を外された。「いろいろな思いもあって、決まった瞬間は覚えていない。とにかくうれしかったし、また1つ自信になった」。東京V時代の09年にプロデビュー、そして10年のプロ初ゴールを決めた思い出の場所・味スタで、すべてを拭い去る決勝点。試合後は、人目をはばからず涙を流した。

 次節、ホーム鹿島戦では高木と並ぶチーム公式戦得点王のアレックス、フランサを欠くことになるが、成長を続ける高木がいる。チームに苦しい試合を勝ちきる力もついてきた。高木は「これを続けるだけです」。ベテランの高原も「こういう試合でワンチャンスをものにして勝てたことは大きい。上位で戦い続けることで、もっと成長していける」と言った。白星で幕を開けたゴールデンウイークの3連戦。文字通り、黄金の連勝街道を突っ走る。【前田和哉】