<J1:名古屋1-1横浜>◇第30節◇27日◇豊田ス

 横浜MF中村俊輔(34)見事な“サヨナラ同点FK”を決めた。0-1の後半50分。ゴールやや左、約23メートルの位置で得たFKを直接ねじ込んだ。右へとカーブしポスト内側に当たったボールは、横っ跳びしたGK楢崎の体に触れ転がり込んだ。静まりかえるアウェーの会場で、直後に試合終了のホイッスル。相手の名古屋の選手はピッチにへたり込んだ。

 「(試合後)シャワーを浴びている時に気付いたけど今年1発目。恥ずかしいよね。もっと決めないと」

 中村は、こう言って笑った。10日の横浜FCとの天皇杯3回戦で2本決めているが、リーグでは今季初の直接FK弾。同出場9年連続となる直接FKは、うれしさより恥ずかしさが先にきた。

 ここしかないというコースに決めた。長年にわたり日本代表を支えてきた相手GK楢崎との対決。互いを知り尽くす2人の名勝負にも勝った。「ナラさんだったから素直にニアに蹴った」。負けた側も潔い。「ポストに当てて、俺にも当てて入れる神業」と楢崎もサバサバしていた。2人を慕う名古屋DF闘莉王も、勝負度外視で対決を楽しんだほど、見どころ十分だった。

 ポイントはJ屈指の長身選手がそろう高い壁をどう越えるか、だった。ここで生きたのがセルティックや数々の国際Aマッチで刻んできた感覚。「壁がデカいから、海外みたいな感じだった」。キックの種類も対処法も別格だった。横浜は、ひと蹴りで試合を決められる中村の左足で勝ち点1を手にし、何とか上位に食らい付いた。【八反誠】