ビンに“ゴール指令”だ。J2札幌のベトナム人FWレ・コン・ビン(27)が30日、札幌・宮の沢での紅白戦で初めて主力組でプレーした。財前監督は明日9月1日の岡山戦(札幌厚別)に向け、東南アジア人初得点を勝敗のポイントの1つに挙げた。終盤の途中出場が濃厚も、岡山は後半残り15分の失点が最も多い。札幌と勝ち点3差の8位につけるプレーオフ争いのライバルを、ベトナムの英雄の1発でねじ伏せる。

 ビンがフィットしてきた。この日の紅白戦では、先発陣のチェック後、途中からのオプションを想定したメンバーの1人としてトップ下に入った。ゴール前で積極的にボールに絡む19番に、財前監督は「ゴールだビン、ゴールを目指せ」と得点を要求。MF岡本のラストパスが合わずゴールラインを割ると、今度は北原コーチが「ビンがいいところで空いていたぞ」と決定機の選択肢として、動きを見ておくよう指示した。

 今季初の3連勝のキーマンだ。先発陣の奮闘は必要だが、相手の岡山は3人のDFと左右MFを含めた5人で固く守り、カウンターでの1発を狙うのが特長。手堅さは引き分け数リーグ最多14という戦績にも表れている。指揮官は「前半は0-0でもいい。ホームだから勢い込むと相手の思うつぼ」と言う。勝負は後半31分からの終盤15分。岡山の時間帯別失点が7と最も多い。「期待するのは、まさに決定力」と財前監督。劣勢の際、終盤から切り札のビン投入で風穴をあける。

 ベトナムの英雄も、うっぷんがたまっている。11日の横浜FC戦でアシストデビューも、その後は3試合出番がない。25日の前節水戸戦は1-1の同点となった後半に出場準備を指示されたが、同40分にフェホの勝ち越し弾が決まった時点で、守備でのバランスを考慮して砂川に切り替えられた。それだけに「この前は直前で出られなかったからね。試合に出たい。次は絶対出たいよ」と意欲をみなぎらせた。

 全体練習後は、居残りでシュート練習に励んだ。他の選手と異なる「ボムッ」という重低音を響かせ、強烈なブレ球での右足ミドルを次々とネットに突き刺した。これまで「まず出られたら勝利に貢献したいよ」と控えめだったが、今回は「チャンスがきたら、ゴールを決めるよ」と力を込めた。来日約1カ月。ベトナム一のスターと呼ばれてきた理由を、1発で知らしめるしかない。【永野高輔】