<J1:川崎F1-0横浜>◇第34節◇7日◇等々力

 川崎FのFW大久保嘉人(31)がACLへの扉をこじ開けた。後半9分、速攻からゴール左で球を受けると、右足を振り抜く。ボールの中心をとらえた強烈なブレ球となり、GK榎本ははじくだけで精いっぱい。こぼれ球からFWレナトの決勝点が生まれた。

 4戦連発はならなかったが、26得点で初の得点王に輝いた。「最高にうれしい」のは亡き父にささげられたから。お立ち台で、5月に死去した父克博さん(享年61)の話を振られて号泣した。「亡くなった年にタイトルを取りたかった。ずっと忘れずにいられる」。プロ入り後、最初の贈り物が父への高級腕時計。その遺品を試合の日だけ腕にはめ、会場に向かっていた。

 25得点を超えた日本人は02年の磐田高原(26得点)以来11年ぶり。得点王争いで新潟川又やC大阪柿谷を振り切った。「年下に負けたら恥ずかしいやん」。キングの言葉を思い出した。11月に三浦淳宏氏の引退試合で横浜FCカズから「得点王取れよ」と言ってもらい、こう思った。「まだ俺が、若いやつらの壁になれって意味なんだろう」と。

 残り4試合で3位とは勝ち点8差もあった。一時は絶望しかけたが、4連勝で圏内に食い込んだ。その4戦で大久保は4発。移籍1年目のエースが川崎FをACLに導いた。【木下淳】