<J1:仙台3-3C大阪>◇第32節◇22日◇ユアスタ

 仙台はホームでC大阪と引き分けたが、16位大宮との勝ち点差を3に広げた。2-2の後半終了間際、途中出場のFWハモン・ロペス(25)が左足で来日初ゴールを決めて勝ち越し。直後に追いつかれて勝利は逃したが、残留争いの正念場で秘密兵器がついにベールを脱いだ。

 沈黙を続けていたハモンの左足が、土壇場で火を噴いた。2-2で迎えた後半43分、敵陣でMF梁と相手を挟んでボールを奪うと「来た瞬間に打つと決めた」と迷わずミドルシュート。速く低い弾道でネットに突き刺さった。ベンチの仲間のもとへ真っ先に駆け寄り、抱き合って喜びを爆発させた助っ人は「勝ち点3が欲しかったけど、ゴールを決められてうれしい」と来日5カ月での初得点に胸をなで下ろした。

 守備面の成長が強烈な一撃を生み出した。シュートの1つ前のプレーでボールを取られかけたが、すぐさま奪い返しに行った。加入当初は相手にプレスをかける場面はほとんどなかった。「今までやってきたサッカーとは全然違う」と日本のテンポの速さに戸惑い、渡辺監督やコーチ陣から守備の甘さを毎日のように指摘された。それでも、チームに貢献したいという一心で価値観を変えた。この日も「ベンチで監督から『守備をしっかりやる』『チャンスを逃さない』と指示を受けていた。その通りできてよかった」。信頼を勝ち取って結果を出したブラジル人助っ人は、晴れやかな表情で手応えを口にした。

 情勢が不安定なウクライナの前所属チームから移籍証明書が届かず、加入後1カ月も公式戦出場が許されなかった。ケガでの離脱もあった。「本当につらい」と漏らすこともあったほど苦しみ、悩んだ来日最初のシーズンも残り2試合。「10分でも20分でも、出たらチームのために自分の力を最大限に出したい」。試練を乗り越えたハモンが、残留争いの救世主になる。【鹿野雄太】