<J1:仙台2-1徳島>◇第33節◇29日◇ユアスタ

 仙台が最終節を待たずにJ1残留を決めた。ホーム徳島戦の前半5分、ゴール前でMF太田吉彰(31)が押し込み先制。後半13分にはスルーパスに抜け出したDF菅井直樹(30)が追加点を奪った。同32分に1点を返されたが全員で守りきり、16位大宮が敗れたため、15位以上が確定した。4月から就任してチームを立て直した渡辺晋監督(41)が日刊スポーツに手記を寄せ、苦しかった道のりを振り返った。

 

 

 

 

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 来季もJ1に残留することができました。ですが、目標ではなかったですし、クラブ創立20周年に花を添えるような成績を残せず申し訳なく、悔しい思いでいっぱいです。まだ1試合残っていますが、未熟な私についてきてくれた選手、スタッフ、サポーター、ベガルタ仙台に携わるすべての方に感謝しています。

 この1年間は、本当に多くの経験をしました。今季はアーノルド監督を支えるヘッドコーチという立場でスタートしましたが、キャンプから近くで見て感じたのは、新しい戦術に選手の気持ちが乗ってこなかったということです。コミュニケーションを取ってメンタル面を緩和させるのが私の仕事でしたが、やりきることができなくて、アーニーにも選手にも申し訳なかったと思っています。

 4月に監督に就任して、まずは去年までのスタイルに戻して勝つことだけを考えました。5月に4連勝しましたが、特別に植え付けたことはありません。やり慣れたメンバーとスタイルに戻して、違うことをやって苦しんだ選手たちに「やっぱりこれだ」「できるんだ」と思ってほしい気持ちが大きかったです。

 4連勝の後、中断期間の延岡キャンプで、私は自分の色を出そうとしました。これまでのカウンターやクロスからだけではなく、中央を連係で崩す形をしつこく練習してきたつもりです。だからといって、守備をおろそかにしてはいけないと伝えてきたのですが、意識が攻撃に偏りすぎてしまったのは反省です。中断明けは結果も出ず、キャンプの成果が出た得点は本当に少なかったと思います。でも、選手たちはトライしてくれました。時間はかかるかもしれないけど、必ず中断前の勝利からプラスアルファを手に入れられるという手応えはありました。

 ですが、8月からの5連敗で苦渋の決断をしました。(上本)大海の復帰でDFラインを高く保って、前からボールを奪いに行く形にトライしましたが、うまくいきませんでした。もっと早く出血を止める作業はできましたが、負けても選手と話をして続けました。川崎F戦で堅守速攻の形に戻して結果も出ましたが、振り返ってみると、延岡キャンプでやったこと、DFラインを高く設定したことが、もしかしたら早かったのかもしれません。自分の色を出そうと急ぎすぎたと感じる部分はあります。

 監督になって半年間で、スタメン11人とメンバー18人を選ぶ仕事は本当に難しいと痛感しました。自信を持って、責任を持ってやったつもりです。選手交代も早く手を打つべきなのか、我慢すべきなのか、毎試合のように考えました。本当に大きな経験をさせてもらったと思っています。ベガルタでの14年間の経験を、この先の20年に成果として出せる礎を築けるよう、これからも頑張っていきたいと思います。(ベガルタ仙台監督

 渡辺晋)