神戸からJ3福島に完全移籍したDF茂木弘人(30)が13日、福島市内で異例の単独加入会見を行った。昨季限りで契約満了となり、J1、J2に加えてタイ・リーグのクラブからもオファーを受けたが「難しい決断だったけど、体が動く間に福島の力になりたいという思いが増していった」。プロ入りまで18年を過ごした故郷を愛する思いが、茂木の心を動かした。

 大きな覚悟を持って2カテゴリー下の地元クラブを新天地に選んだ。年俸は大幅に減り、専用の練習場もない。夫人も郡山市出身とはいえ、神戸の選手やスタッフに移籍を伝えた際には「えっ?

 本当?」と一様に驚かれたという。昨季も公式戦17試合に出場し、J1通算183試合20得点の実績を持つ男は「J1でやれる自信はあるし、環境も相当なギャップがあると思うけど、全てを受け入れて決断した」。12月中旬に栗原監督とともに神戸まで足を運び、真っ先にラブコールを送った鈴木社長は「正直うちがオファーを出せるような選手ではないが、ダメ元で打ったシュートが奇跡を起こした」と喜んだ。

 J3屈指の実力者にかかる期待は大きい。近年はサイドバックでの起用が多いが、もともとはFW。鈴木社長から「優勝争いに名乗りを上げたい。得点王を狙ってほしい」とエールを受けると「与えられたポジションで結果を出すだけ」と言い切った。今季は優勝してもスタジアム面などの問題でJ2に昇格できないが、茂木が福島の未来のために走りだす。【鹿野雄太】

 ◆茂木弘人(もぎ・ひろと)1984年(昭59)3月20日、福島市生まれ。聖光学院高では世代別日本代表にも選出され、02年に広島入団。FWとして1年目から15試合2得点と活躍した。06年に神戸へ移籍し、翌07年にサイドバックに転向。サイドハーフなど複数ポジションをこなす。J1通算183試合20得点。J2通算77試合5得点。174センチ、71キロ。血液型B。