現在、米国で行われているプレシーズン大会「国際チャンピオンズ杯」で、ちょっと驚くべきことがあった。7月30日に行われたマンチェスターC-リバプール戦に、なんと4万9653人ものファンがつめかけたのだ。

 この日の会場は大リーグ・ヤンキースの本拠地でもある、あのヤンキースタジアム。伝統あるベースボールの聖地が、5万人近いサッカーのサポーターで埋まったのだ。

 実はこの4万9653人という数字は、今季ヤンキース・ホーム戦のどの試合よりも多い。黒田博樹が先発した4月7日のホーム開幕戦の4万8142人をもしのぐ数だ。

 今年はヤンキースの顔と言われるデレク・ジーター主将が引退するラストイヤー。最後の勇姿を一目見ようというファンが連日、球場を訪れており、チケットの入手も難しくなっているという。

 そんな中、どんな野球の試合よりも、マンC-リバプール戦の集客数の方が多いというのは、サッカーファンにとっては結構、痛快なことなのではないだろうか。

 W杯ブラジル大会では米国代表が気迫のこもったプレーをみせて16強入り。長年サッカー不毛の地といわれ続けた米国だが、その実力に加え、人気の面でも10~20年前とはまったく違ったものになっている。

 数年前、ニューヨークに住んでいた時、息子の友人の父親とサッカー談議になり、「米国ではサッカーは主に女子がやるスポーツだと思っていた」と言うと、けげんな顔をされたことが思い出される。

 米MLSが現在の国内サッカー人気に大きく貢献しているという点も見逃せない。日本ではJリーグのスター候補が、次々に欧州へと旅立っていくが、米国では逆だ。

 代表のエースであるMFクリント・デンプシー(31)は昨年8月、トットナムからシアトル・サウンダーズに移籍。プレミアリーグでも十分にやれる実力を持ちながら、国内ファンの前で闘志あふれるプレーを見せている。ブラッドリー、ズシの両MFも「国内組」だ。

 15年には、マンCとヤンキースが共同で設立したニューヨークシティーFCもMLSにデビューする。スペイン代表FWビリャや、イングランド代表MFランパードの加入がすでに決定しており、ますます米国でのサッカー人気は盛り上がりそう。Jリーグ人気に陰りが見える日本人としては、ちょっと複雑な心境だ。