国際サッカー連盟(FIFA)は16日に公表した汚職事件の起訴者に損害賠償を求める文書で、過去のワールドカップ(W杯)招致で複数理事による票の買収があったことを初めて盛り込んだ。

 ブラッター前会長の体制と決別する姿勢を打ち出し、2月就任したインファンティノ会長の下で改革への第一歩を踏み出した。

 2010年W杯招致の際は元北中米カリブ海サッカー連盟会長で元FIFA副会長のワーナー氏、その腹心ブレーザー氏らがモロッコや南アフリカから賄賂を受け取ったとしている。モロッコからは100万ドル(約1億1300万円)が渡り、開催国となった南アフリカは1千万ドル(約11億3千万円)を払い、国際試合開催の権利などで便宜を図ったという。

 11年のFIFA会長選に立候補した当時のアジア・サッカー連盟会長、ハマム氏がカリブ海連合の会合で各協会に4万ドル(約450万円)の入った封筒を配ったことも明らかにした。FIFA関係者は「賄賂を認めたという意味では初めてになるのではないか。損害賠償についても数カ月前から準備していたはず」と話した。

 前体制での隠蔽(いんぺい)体質から脱却し、暗部の一部をさらけ出したことは前進だ。W杯招致については他の大会にも疑惑の目が向けられており、不正の拡大が明るみに出る可能性はある。