プレーバック日刊スポーツ! 過去の8月26日付紙面を振り返ります。2012年の1面(東京版)はサッカープレミアリーグ・マンチェスターUのMF香川真司の1号ゴールでした。

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<プレミアリーグ:マンチェスターU3-2フラム>◇25日◇オールドトラフォード◇観衆7万5372人

 【マンチェスター(英国)25日=小野真由子通信員】マンチェスターUの日本代表MF香川真司(23)が「シアター・オブ・ドリームズ(夢の劇場)」オールドトラフォードで主役となった! 本拠地デビュー戦で移籍後、公式戦初ゴールを奪った。今季ホーム初戦のフラム戦でトップ下で先発出場。1-1で迎えた前半35分、ミドルシュートを相手GKがはじいたところを、ゴール正面で確実に右足で流し込んだ。チームも3-2で勝利。本拠地のサポーターに新戦力の背番号26を強烈に印象づけた。

 世界中の選手があこがれる「夢の劇場」で、香川が主役となった。前半35分、MFクレバリーのミドルシュートをGKがはじき、そのこぼれ球を確実に右足で流し込んだ。周囲を見渡し、オフサイドでないことを確認すると、右拳をアッパー気味に突き上げ、歓喜の雄たけびを上げた。

 予感はあった。試合が進むにつれてボールタッチが増え、同23分には左足からミドルシュートを放った。GK正面に飛んだが、本拠地のサポーターからは大きな拍手が起こった。同24分にはカウンターからMFヤングに好パスを通すと、その11分後にマンUの輝かしい歴史に「香川真司」の名を刻む一撃をマークした。

 前半3分にまさかの先制点を許したが、同じく新戦力のFWファンペルシーが豪快な左足ハーフボレーで同点弾を突き刺した。嫌でも比較される新戦力同士。ただ、香川に焦りはない。ピッチを幅広く動き回り、ボールを呼び込み、小気味よくパスを散らし、そして得点機に絡む。持ち味を存分に発揮してみせた。

 20日のリーグ開幕エバートン戦ではトップ下で先発フル出場したものの、チームは敗れ「負けたことに、ものすごく責任を感じている。悔しさを忘れずに頑張りたい」と反省ばかりだった。だが、ファーガソン監督は24日の試合前日会見で「(香川)シンジは両足が使えてバランスが良く、素早い。本当に満足している」と絶賛。この日も定位置のトップ下で先発した。

 実は指揮官が香川獲得に際し、周囲に理由を明かしたことがあるという。関係者によると「献身的で技術が高く、得点に絡める選手はたくさんいる。だが、献身的で技術が高く、得点を奪える選手はそうはいない。香川は得点が奪える選手だ」と明言。移籍当初から香川への期待と信頼を口にしていたというのだ。

 大黒柱のFWルーニー、ウェルベック、ベテランMFスコールズ、ギグスはこの日は控え。中心選手として迎えた本拠地初戦で先発し、真価を発揮。後半に入ると、ことごとくパスに絡んだ。その姿にはマンUの中心の雰囲気さえ漂った。

 後半23分、ルーニーと交代してピッチを退く際にも大きな拍手が起こった。敗戦の責任を背負ったエバートン戦から5日。「結果を残すことが大事」と言い続けてきた背番号26は、チームに勝利をもたらすゴールで、歴史的で極めて大きな1歩を踏み出した。

 ◆香川真司のコメント ホームの開幕戦で決めることができてホッとした。1試合1試合結果を残していく必要がある。もっとできるという感覚はあるので、辛抱強くやっていきたい。ここで喜んでいる暇はない。今度は自分の形でゴールを決められるようにしたい。

 ◆ファーガソン監督「満足」 ファーガソン監督が新戦力の香川とファンペルシーのパフォーマンスを高く評価した。この日、初めて同時先発し、2人そろってゴールを決めたとあって「ファンペルシーと香川の今日の出来には満足している」と称賛の言葉を送った。また、途中出場しながら右太ももをスパイクで踏まれて裂傷を負ったエースFWルーニーについては「(回復まで)4週間くらいかかる」と明言。エースの故障が香川の先発固定への追い風になる可能性すら出てきた。

 ◆オールドトラフォードで得点した日本人 プレミアリーグでは、フラムに所属していた稲本潤一(現川崎F)のみ。03年10月25日のリーグ戦で、味方の負傷により前半32分から出場。後半34分にはダメ押しの3点目を決め3-1の勝利に貢献した。オールドトラフォードで実に40年ぶりの勝利だった。欧州チャンピオンズリーグでは、06年9月14日の1次リーグで、当時セルティック所属の中村俊輔(現横浜)が、前半43分にゴール前約22メートルの位置から左足で芸術的FKを決めた。試合には敗れたものの、英メディアから絶賛された。

 ◆プレミアリーグでの日本人の得点 香川で3人目。初得点は02年9月11日のフラムMF稲本潤一(現川崎F)。トットナム戦で、0-2の後半24分にゴール前のこぼれ球を拾い、右足で豪快に決めた。稲本は同シーズンさらに1得点、翌シーズンも2得点を挙げて通算4得点。05年10月23日にはボルトンの中田英寿がウェストブロミッジ戦で0-0の後半36分、中央やや右で得たFKをゴール左隅に突き刺した。これがイングランドでは最初で最後の得点となった。