セルティックMF中村俊輔(30)が、来年1月に横浜に復帰することが、23日までに決定的になった。欧州視察から帰国した日本協会の川淵三郎名誉会長が、国内復帰が内定している旨を明かした。中村本人と相思相愛の古巣横浜が、移籍金約10億円(推定)の準備にめどを立てたもよう。早ければ来月にも、代理人のロベルト佃氏が渡英し、最終交渉に入る。

 日本の誇る司令塔が、ついに国内復帰を果たす。欧州チャンピオンズリーグ(CL)、マンチェスタ-U対セルティック戦を視察した日本サッカー協会の川淵名誉会長は、試合後に中村本人から、帰国の意思が固まったことを伝えられたと明かした。「試合後に彼と話をした。子供もそろそろ(幼稚園)だし、自分も30歳になるからと、日本に戻ることを決心している様子だった」。

 最大のネックだった、移籍金の捻出(ねんしゅつ)にめどがついた。横浜関係者によると「必要な移籍金は10億円ほど。だが何とか準備はできそう」と話した。これまでに、来季の強化予算として、10億円を確保。もし足りない部分が出れば、親会社の日産自動車から補てんを受ける準備も進めてきた。獲得できれば、経済効果は計り知れないことは明らか。有効な先行投資として、内外の理解を得られたもようだ。

 中村本人も、早期復帰の望みを、日に日に強めていた。親しい関係者には「力が落ちないうちに帰らないと、受け入れてくれるJクラブのためにならない」と話していた。スコットランドの気候も障害だった。確かに欧州CLに常時出場できたことで、貴重な経験をつむことができた。だが一方で、同地のあまりの寒さのため、けがの危険性が常に付きまとった。

 あと数年早ければ、以前から念願だった、スペイン等への移籍へ動いた可能性もある。だが30歳を過ぎたことと、環境を変えることによる家族への負担を考慮。自身が生まれ育った横浜への愛着も強く、望ましい子供の教育環境を確保したいという思いもあった。古巣は現在J1残留争いに巻き込まれているが、J2降格という最悪のケースでもその決意は揺らがないという。

 日本に戻ることは、日本代表にとっても好材料だ。これまでは試合のたびに、10時間以上をかけて帰国。疲労や時差ぼけとも戦いながら、チームの攻撃を指揮してきた。しかも今回のW杯最終予選ではオーストラリア、ウズベキスタン、バーレーン、カタールと同組になった。このまま欧州でのプレーを続ければ、アジアに点在するライバル国への移動で、さらなる肉体的消耗を強いられていたはずだ。だが国内復帰で、移動による負担は大幅に軽減される。

 横浜の資金繰りにめどがついたことで、今後はセルティック側との、最終交渉となる。中村に絶大な信頼を寄せるストラカン監督は現在「自分が知らないところでナカの移籍が決まったら、オレは監督を辞める」とまで話しているという。だが最終的には、中村本人の意思を尊重する見込み。欧州でもまれた司令塔が、まもなく凱旋(がいせん)の時を迎える。