<世界陸上>◇19日◇女子800メートル決勝◇ベルリン五輪スタジアム

 【ベルリン20日=佐々木一郎】女子800メートルで「性別疑惑」が浮上した。同種目決勝は、南アフリカのキャスター・セメンヤ(18)が1分55秒45で優勝。体形や顔立ちが少年のようでもあり、国際陸連はセメンヤの性別を医学的に調査中だ。別格の強さと容姿から、思わぬ騒動に発展した。

 メダリストの記者会見に、セメンヤは来なかった。国際陸連のピエール・ワイス専務理事は、南アフリカ陸連に代わって「セメンヤを取り巻く現状から、質問に答えることが難しい」と説明。欠席もやむを得ない事情に理解を示した。銅メダルのメドウズ(英国)は「うわさは聞いていた。あとは国際陸連がどう対応するかでしょう。でも、真実でないなら、彼女がかわいそう」と話した。

 レースは、セメンヤの圧勝だった。残り200メートルでスパートし、後続を振り切った。自己記録を1秒27更新し、1分55秒45でフィニッシュ。前回覇者のジェプコスゲイ(ケニア)に2秒以上の差をつけた。直後のインタビューには、一切答えなかった。

 16日の予選はレース中に足首をひねった。「トレーナーに診てもらい、駄目なら欠場する」としていたが、17日の準決勝をトップ通過。サッカーで左サイドバックを務めていたことを明かし「走るのをやめたくなったら、来年だってやめる」と話していた。

 性別論争に火が付いたのは7月末のアフリカ・ジュニア選手権。昨季まで2分も切れなかったセメンヤが、1分56秒72の今季世界最高をマークした。がっしりとした筋肉質の体形で、声はやや低い。自然に疑う声が高まっていた。

 現在、国際陸連は性別を調査している。ただ本人は子どものころから女性として育ってきた。同陸連のニック・デービス広報は「これは医学的な問題で、不正行為を問うものではない。非常に繊細な問題であり、慎重に扱わねばならない」と話す。婦人会、心理学者、性の専門家らの調査に数週間を要するという。