<岐阜国体:陸上>◇8日目◇6日◇岐阜長良川競技場

 成年女子100メートルで、女王・福島千里(24=北海道ハイテクAC)が貫禄勝ちした。ロンドン五輪後初のレースだった。五輪では本来の実力を発揮できず、100メートル、200メートルともに予選落ちした。今大会で苦戦も予想されたが、フタを開けると得意のロケットスタートで飛び出し、一気にリードを奪った。「国体ですから楽しんで走って、次に向けての準備をしていこうと位置づけていました」。11秒55で一番にテープを切ると“千里スマイル”がはじけた。

 向上心をみせた。予選、準決勝、決勝と1本1本試していたことがあった。具体的な内容は明かさなかった。それでも、日本選手権やオリンピックなど「とっておきのレースでは無心に走る」そうだが、今回は「レースが一番の練習」というつもりで走った。今大会は個人種目最終戦だった。五輪同様、シーズンベストも11秒34と不本意な記録に終わった。4年ぶりに11秒2台が出せなかった。

 振り返れば、3月の世界室内が発端だったのかも知れない。60メートルの予選で7秒29の室内日本新。ここまではシナリオ通りだった。が、インフルエンザにかかり、ホテルで4日間寝込んでしまった。冬季トレーニングで体幹を中心に「最高の体」(中村宏之監督)をつくり上げたが、インフルエンザで、一気に筋力が落ちてしまったようだ。

 今季は、靴底の硬いスパイクを記録更新の秘密兵器として導入した。スムーズに対応できずに試行錯誤を繰り返した。5月のぎっくり腰、日本選手権での脚のけいれんと続き、状態が上がってこない。結果的に本来のダイナミックな走りが影を潜めてしまった。

 「もどかしい1年間でしたが、こういうシーズンにオリンピックがぶつかったことは反省しないといけません。(来季以降)11秒2台を出すためではなく、11秒1台、0台を狙ってやっていきます。このシーズンが良い勉強になったと振り返ることができるようにしたい」

 100メートルを3連覇で締め“千里スマイル”はちょっぴり戻った。福島は、大舞台に負けない真の女王の強さと輝きを求め、また一歩ずつ歩き始めた。