<陸上:織田記念国際陸上競技大会兼世界選手権代表選考会>◇第1日◇28日◇エディオンスタジアム広島

 たまには負けなきゃ-。今夏の世界選手権モスクワ大会代表に決まった男子マラソンの川内優輝(26=埼玉県庁)が、男子5000メートルに出場。スピード強化の一環としての出場だったが、14分9秒88で出場20人中、18位だった。転んでもただでは起きない公務員ランナーは「苦い経験も無駄にはしない」と今後に生かすつもりだ。

 顔をゆがめ、ズルズルと後退する川内の走りっぷりも、ある意味で新鮮だ。“本職”のロードでないトラック種目での出場。13分58秒62の自己ベストは20人中の最下位。あわよくば、その更新を目指したが、そうは甘くなかった。3000メートルまでは中位を保ったが、次第に後退。1000メートルのラップを3分近くまで落とし、自己ベストに11秒26遅れてフィニッシュした。

 1週間前の長野マラソンで、右太もも裏に張りが出た。「今回を逃したらトラックの練習をできないので強行的に」と話す状態で、最下位もブービーも逃れたのは、この男の強運か。ペースダウン後の「抜かれても粘り切れるか。そこが足りなかった」と反省の弁を口にしつつ、プラス思考も半端じゃない。「最近、勝ってばかりで、ボロボロに負けた方が気合が入る。ショック療法です」。

 世界陸上マラソン代表決定後の初レースで、久々の2ケタ順位。「苦い経験が今後の励みになる。無駄ではなかった」と収穫はたっぷりだ。前夜は宿舎でプロ野球中日の外国人とエレベーターで遭遇し「お前のこと知っている」と言われたという。それを、うれしそうに話す公務員ランナーが、着々とモスクワを目指す。