男子SPでソチ五輪金メダルの羽生結弦(20=ANA)が今季自己最高点となる96・27点をたたき出した。冒頭の4回転ジャンプを完璧に決めると、終盤に転倒はあったが2位以下に約10点差をつける1位。しっかりと日本チームをけん引した。無良崇人(24)は4位、女子SPでは村上佳菜子(20)が5位、宮原知子(17)が6位。順位点の合計で日本は43点の2位につけた。

 「やっと自分のトーループが跳べるようになってきた」。羽生が求め続けた感覚が帰ってきた。開始23秒、冒頭の4回転。勢いよく跳ね上がると、細身の体を高速回転させた。しなやかに着氷。そのまま流れるように片脚で滑って余韻を漂わせた。完成度に対して加算される出来栄え点は2・71点(最大3点)。満員の場内が一気に沸いた。

 鍵は脇腹だった。昨年末に「尿膜管遺残症」と診断され、腹部の手術を受けた。4カ月たつが、いまもわずかな炎症は残る。安静で体を動かせなかった影響を受けたのが、4回転ジャンプを跳ぶときにひねりの力を生み出すための脇腹の筋肉だった。柔軟さが失われ、硬直化していた。先月の世界選手権後からの2週間は、ほぐすマッサージを徹底。左右のバランスにも気をつけて調整してきた。その成果で、昔の自分のジャンプを取り戻した。

 終盤の2連続3回転で、最初のルッツが前かがみになり、続くトーループを強引に跳んで足が絡まった。尻もちをつく失敗に、演技後にはリンク脇から声援を送ってくれた仲間に対し、「ごめん」と手を合わせた。ただし、「正直びっくりしている」と得点は首位。「非常に良いジャンプが跳べたのでホッとしている」と本心ものぞかせた。

 昨年11月の中国杯での激突事故に始まり、苦難続きだった今季。最終盤にして、ソチ五輪で金メダルをつかんだ時のようなキレ味を取り戻してきた。今日17日のフリーは今季最終演技。世界選手権ではミスがあり2位に敗れた。「一番悔しいのは間違いなくフリー。その悔しさをぶつけられるように頑張りたい」。若き王者は気持ちをたぎらせた。【阿部健吾】