ラグビーW杯イングランド大会が18日に開幕する。歴代日本代表において「史上最強」といわれるエディージャパンは、91年以来24年ぶりの勝利に終わらず、8強進出を目指す。躍進のカギを握る日本の武器を、5回に分けて紹介する。第3回のラグビー日本代表の通算最多得点記録を持つFB五郎丸歩(29=ヤマハ発動機)は、黄金の右足から放たれる正確無比なキックが武器だ。ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が「W杯でトップクラスの選手が記録する数値」として掲げた「キック成功率85%」を目指し、試行錯誤を重ねること3年。「85%を達成する準備はできた」と言うほどの安定感を得た。その秘密は、蹴る前の儀式にある。

 蹴るまでのルーティン(決まり事)はこうだ。ボールを軽く回して投げ上げてからセットする。3歩下がって左に2歩動く。右腕を振って蹴るイメージをつくる。特徴的なのはその直後だ。蹴る前に膝をそろえて中腰になり、両手を合わせて祈るようなポーズを取る。「体の真ん中に力を集中させるイメージ」を思い浮かべてから助走に入る。

 昨季のキック成功率は約81%。あと4%のためになにかを変えなければいけなかった。キック専門のコーチがいない日本代表で、「まずは見えるところを安定させよう」と取り組んだのが、この儀式だ。ボールの置き方を変えるなど微調整を加えて、ついに完成。8月22日のウルグアイ戦(福岡)では、6本のキックを全て成功させた。

 早大2年の05年に19歳で代表デビューしたが、07、11年のW杯メンバーには選ばれず、意外にも今回が初のW杯だ。かける思いは強い。「日本人はコンタクトスポーツでは勝てないと言われてきた。W杯で勝つことでしか、そのイメージは変えられない」。03年大会でイングランドを優勝に導いたSOウィルキンソンをはじめ、勝つチームにはトップクラスのキッカーがいた。初めてのW杯でその仲間入りを果たし、日本ラグビーの歴史を変える。その準備はできている。【岡崎悠利】

 ◆五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)1986年(昭61)3月1日、福岡市生まれ。3歳でラグビーを始める。小4からはサッカーも。福岡市立老司中時代は部活がサッカー、クラブでラグビー。佐賀工高時代は3年連続で花園に出場。早大では1年からスタメンで、全国大学選手権を3度制覇した。ヤマハ発動機に所属し、昨季の日本選手権で優勝。185センチ、100キロ。