日本(世界ランク13位)が初戦で歴史的大金星を挙げた。ラストプレーでWTBカーン・ヘスケス(30=宗像サニックス)が逆転トライを挙げ、過去2度世界一の優勝候補・南アフリカ(同3位)に逆転勝ちした。

 故郷南アフリカに最高の恩返し-。日本代表WTB松島幸太朗(22=サントリー)が、歴史的勝利に貢献した。南アで生まれ、南アで育ち、ラグビーを始め、鍛えた。すべてが詰まった自身のルーツ国相手に絶妙な突破でトライを演出し、トライを阻止する強烈なタックルを見せた。南ア代表よりも日本代表への道を選んだ松島が、歴史に残る大きな仕事をやってのけた。

 同点で迎えた後半31分、松島が中央を突破した南アSOポラードに強烈なタックルを見舞った。ゴールまで数メートル、トライを許せば試合が決まる場面だった。取り切れなかった相手がPG狙いに切り替えたとき「勝利を確信した」。3点を追った残り時間も確実にボールをつないだ。劇的な逆転トライで勝利すると「これまでの勝利の中で、一番うれしい」と振り返った。

 ジンバブエ人の父と日本人の母の間に、南アで生まれた。6歳まで過ごして来日し、12歳の時に1年間南アへ。やっていたサッカーのチームがなく、ラグビーを始めた。さらに、神奈川・桐蔭学園高卒業後にラグビー留学。「わりとドライ」。淡々と話したが、松島にとっての南アは特別な国だ。

 留学時代に、南アのU-20代表候補になった。しかし「日本代表で強いチームに勝ちたい」と辞退。昨年サントリー入りしたが、南アの3年間で松島は大きく変わった。しなやかなステップに強さが加わった。体も一回り大きくなった。後半29分にはサインプレーから抜けだし、FB五郎丸のトライをお膳立てした。

 「親しみのある顔もいたので、試合後に話もした」と松島。留学時代のチームメートもいた。「再会して勝てた。自分と日本の成長を見せられた」と頼もしく言った。桐蔭学園の藤原監督は「(07年W杯トライ王の)ハバナとの対戦を楽しみにしていた。南アで、体だけでなく精神的にもタフになった」と目を細めた。

 南アの大使公邸に招かれてテレビ観戦した母多恵子さん(51)は「育ててもらった国と試合をするのは不思議な感じ。お父さん(ロドリックさん=故人)も喜んでいると思います」と話した。ラグビーと出会い、自分を育ててくれた故郷に勝った松島は「ずっとハードワークしてきた結果。今日の試合もきつかったけれど、4部練習の方が精神やられる」と笑った。

 ◆松島幸太朗(まつしま・こうたろう)1993年(平5)2月26日生まれ。父がジンバブエ人で、南アフリカ・プレトリア出身。ポジションは主にCTB、FB。神奈川・桐蔭学園高3年で花園優勝。卒業後は南アのシャークスの育成組織で2年間プレーし、現在サントリー所属。175センチ、88キロ。