世界6位の錦織圭(25=日清食品)が、14年全米決勝の再現を制した。10度目の対決となった同14位のチリッチ(クロアチア)に、3-6、7-5、6-3の2時間11分で逆転勝ち。この勝利で、鈴木貴男が持つ日本男子大会通算最多の17勝に並んだ。準決勝では、今年の全米1回戦で敗れた同32位のペア(フランス)と対戦する。

 23本のサービスエースを食らっても、ホームの有明で負けるわけにはいかなかった。錦織は、反撃の好機をうかがった。少ないチャンスをものにし、逆転につなげた。「大事なポイントでギアを上げられた。勝てて良かった」。約1万2000人の大観衆に、勝利のガッツポーズだ。

 同世代のライバルと国内初対決。10度目の対戦でもあり「お互いに研究し合い、それを読むことが楽しい」。しかし、相手のサーブが「読んでいたところと逆に来た」。それでも「チャンスは絶対に来る」と、第2セット第12ゲームで初めてサーブを破ると、そのまま勝ちにつなげた。

 この日、今大会最多の1万2426人の大観衆が訪れた。大会前の4日から6日連続で、1万人を超えた。過去最多を更新する錦織ファンに「すごい。(僕は)動物園にいるライオンのような感じかな」と、自分を“百獣の王”に例え苦笑いした。

 2連覇に向け、まずひとつ山を乗り越えた。準決勝は、今年の全米1回戦で、屈辱の敗戦を味わったペアが相手になった。「どっちかというとやりたくない。嫌な思い出がある」。何をするか分からない、読めない相手は、錦織のコンピューターも狂う。

 ただ、チリッチにも、全米決勝で敗れた後、雪辱を果たした。ペアへのリベンジには、有明は絶好の舞台だ。勝利の後、観客に思い切り球を打ち込もうとして、ぐっとこらえた。まだ先がある。錦織の表情は、そう訴えていた。【吉松忠弘】