アピール期間は11日間だけ? 12年ロンドン五輪ボクシング男子バンタム級銅メダリストの清水聡(29=ミキハウス)が窮地に陥った。25日、リオデジャネイロ五輪アジア・オセアニア予選(3月、中国)代表をかけた選考会にライト級で出場。出血もあり、全日本6連覇中の成松大介(26)に判定負けして「補欠」となった。入れ替えの可能性は残すが、日本連盟側の勘違いもあり、大会へのエントリー期限は来月5日までとわずかだ。

 下がって、上がって、また下がった…。感情の起伏を抑え、清水は「望みはあると思って、やれることをやるしかない」と意を決したように言った。代表発表で呼ばれたのは成松。「あ~」と落胆した直後、「補欠は清水」の声がリングに響いた。「え?」とうれしい驚きも、九死に一生で事態は終わらなかった。

 3回制の試合は、終盤に偶然のバッティングが起きた2回で終了した。前頭部を切って競技人生初の流血となった。試合は14年秋のアジア大会以来。国際連盟が設立したプロ団体への参加を巡る手違いで、同年11月から1年間の出場停止処分を受けていた。試合勘は戻らず、1回から劣勢。採点は0-2と敗れ、五輪は絶望かと思われていた。

 「補欠」采配は、強化委員長も務める日本連盟の山根会長によるもの。「清水は連盟の財産。大きく貢献してくれた」と救済措置を講じた。試合まで残り2カ月で入れ替える可能性を「40%」と公言までした。清水も「チャンスはある」と前向きに喜んだが…。

 そこから事態を難しくしたのは、試合のエントリー期限。「補欠」発表後に再確認すると2月5日だった。思わぬ勘違いに、同会長は「汗が出てきたな…。情的には清水だけど、成松も調子良い」と困惑しきり。最終的には発表通りで、予選で成松が枠を得れば2度目の五輪が消える。

 13年に紛失した銅メダルを発見したのは今月8日。幸先よい五輪イヤーの始まりも、この日は幸も不幸も重なる1日に。残り11日間で運命はどう転ぶか。【阿部健吾】

 ◆ボクシング男子のリオデジャネイロ五輪への道 昨年の世界選手権で日本勢は1階級も枠を獲得できず。アジア・オセアニア予選(3月、中国)で全階級3位までが得る各3枠を狙う。逃した場合は世界最終予選(6月、アゼルバイジャン)に回る。階級ごとに枠は異なり、ライト級は5枠となる。日本連盟はアジア・オセアニア予選で枠を獲得した選手を五輪代表とし、逃した場合の世界最終予選代表は再考する方針。