世界7位の錦織圭(26=日清食品)が敗れ、32年の佐藤次郎以来、日本男子84年ぶりの4強入りはならなかった。昨年4大大会すべての決勝に進み、3度優勝した同1位のジョコビッチ(セルビア)に3-6、2-6、4-6のストレートで敗れた。次戦は、2月8日開幕のメンフィスオープン(米テネシー州メンフィス)で大会4連覇に挑む。

 まるでジョコビッチに力を吸い取られていくようだった。突破口を必死に探った。しかし、錦織のもがき苦しむ力が、勝利へのパワーへとはつながらなかった。「一番強い選手だとはいえ、もっと何かができた。自分の力を全部出せなかった」。それをさせないのが王者の壁だった。

 カギは、錦織が「早めに終わらせたい」と先手必勝を込めた第1セットに訪れた。2-3からの第6ゲーム。サービスゲームで40-0とリードしながら落とした。特に、40-30からのフォアが焦りから外れ、「そこからミスが増えてしまった」。大勢は決まった。

 「もどかしい」。錦織のこの言葉がすべてだった。数字上は完敗だ。しかし、少しの差で、錦織側に転んでもおかしくないゲームがいくつかあった。27ゲーム中、30オール以上にもつれたゲームは12。そのうち、半分以上の7ゲームをジョコビッチが奪った。取れそうで取れない。うまくいきそうでいかない。それが王者の力だった。

 ジョコビッチとの差を埋めるには、まだ力が足りない。「まだまだ差はあると感じている」。昨年11月のATPツアー・ファイナル1次リーグでは2ゲームしか奪えなかった。「この2試合で、なかなかチャンスを見いだせない。ふがいない」。少しだけ、自分に怒りがわいた。

 しかし、昨年の全米初戦敗退以降は、その「ふがいない」という気持ちさえ、持てなかったのではないだろうか。ジョコビッチは、11年に世界1位になり、それ以降、出場した4大大会20大会で、準決勝前に敗れたのは14年全豪の1回だけ。その世界王者に対し、勝てない自分が「ふがいない」という気持ちこそが、敗れたとはいえ、錦織の復調を物語っていた。【吉松忠弘】

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