競泳の松田丈志(32=セガサミー)が12日、都内で引退会見を開いた。

 4歳から久世由美子コーチ(69)の指導のもと、宮崎・延岡にある、ビニールハウスで囲まれた水深1・1メートルのプールで泳ぎ始めた。04年アテネから今年のリオデジャネイロまで4大会連続で五輪出場。銀1、銅3のメダルを獲得した。「4つのメダルの1つ1つが思い出深いもの」と感慨深げに言った。

 4歳から指導した久世コーチは、小学校時代の松田の笑顔を見たことが、徹底指導のきっかけだったという。小学校低学年のとき、沖縄で九州大会に出場。8位の賞状をもらったとき、松田少年は心からの笑顔をみせた。「こんな笑顔をもう1度見てみたいと少しずつ階段を上がって、トレーニングをさせてきた」と振り返った。

 松田を指導したときに細かく書き記した「久世ノート」が280冊以上ある。会見前日の11日、最後の「久世ノート」に松田は「このノートにはぼくの選手としての成長と歴史がすべて詰まっています」と書いた。「長く続けていくことは大変なこと。これから少しずつ恩返ししていきたい」と涙で28年間の感謝の言葉を口にすると、久世コーチの目にも涙が浮かんだ。

 今後は在籍する鹿屋体大大学院に通いながら、指導者を含めて今後の道を探っていく。「これだけ長い時間、水泳に取り組んできた。これからも水泳を広めていくことをしていきたい。東京五輪にもベストな形でかかわりたい」。久世コーチとともに水泳教室をして、自らのように地方から世界に羽ばたく選手も育てる希望もある。